プロアポルフィン-トリプタミンダイマーは、プロアポルフィンアルカロイドに、トリプタミン誘導体がスピロ環を形成するように縮合したユニークな構造を有しており、これまで10種以上が報告されている。これらには、前立腺癌細胞株に対する抑制活性などが報告されており、構造と活性両面から合成ターゲットとして興味深い。当研究室では、プロアポルフィンアルカロイドの中でも特異な五環性化合物であるmisramineの全合成に成功している。今回代表者は、達成した全合成の知見を基に本化合物の合成を目標に、プロアポルフィン-トリプタミンダイマーの前駆体となるroehybrineとroemehybrineの合成を含めた複数の天然物合成を可能にする全合成ルートの確立を目的に研究を行っている。Roehybrineは、不斉四級炭素を含む3つの不斉中心を構造的特徴としている。我々は、その合成に際し、これまで合成してきたmisramineの合成ルートを応用することを考えたが、misramineとroehybrineの対応する官能基の立体化学を比較すると、テトラヒドロイソキノリン環部分の立体化学が逆であるため、本不斉点の立体選択的な構築法の開発が全合成達成の可否を握る。すでに合成ルートの確立しているケト-アルデヒド化合物に対して、官能基選択的な還元、NHNs化、ケトンの立体選択的還元、分子内光延反応を行うことで望む官能基と立体化学を有する、テトラヒドロイソキノリン骨格を合成することに成功した。
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