研究課題/領域番号 |
20K06953
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研究機関 | 京都薬科大学 |
研究代表者 |
小林 数也 京都薬科大学, 薬学部, 准教授 (80647868)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | プロテアーゼ阻害剤 / ヒドロキシプロリン / BACE1 / SARS 3CLプロテアーゼ |
研究実績の概要 |
申請者は、ヒドロキシプロリンをテンプレート構造として用いた汎用的プロテアーゼ阻害剤設計戦略の確立を目標として、β-セクレターゼ(BACE1)及びSARS 3CLプロテアーゼ(3CLpro)を標的とした阻害剤の開発に着手した。 (1)BACE1阻害剤の開発研究では、これまでに見出した3-メチルフェニル誘導体(IC50 =160 μM)を基盤に、末端ベンゼン環の複素環への置換を検討した。合成した2-メチルピリジン及び3-メチルピリジン誘導体について活性評価を行ったところ、いずれも大幅な活性の低下が認められた。これらの結果から、末端芳香環へのヘテロ原子の導入は、BACE1との相互作用形成に置いて不利に働くことが示唆された。並行して、3-メチルフェニル誘導体のエナンチオマー及びジアステレオマーを合成し、立体化学に関する最適構造の検討を行った。活性評価の結果、これまで検討してきた立体化学を有する誘導体が最も高活性を示すことが明らかとなった。 (2)SARS 3CLpro阻害剤の開発研究では、ヒドロキシプロリンの水酸基へのジフェニルメチル(DPM)基の導入について検討を行った。既報に基づき、①塩化パラジウムを触媒としてジフェニルメタノールを反応させる条件と、②塩化鉄を触媒としてジフェニルメトキシピリジンを反応させる条件について検討を進めた結果、十分な最適化は行えていないが、最大収率58%で目的化合物を得ることができた。続いて、得られたDPMエーテル体から最終化合物であるアクリロイルピロリジン誘導体の合成を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
下記に記すようにそれぞれの阻害剤開発研究において一定の成果は得られているが、新型コロナウイルス感染症の流行の影響で、想定していた研究時間の確保が難しく、十分な数の誘導体合成、活性評価及び、反応条件の検討を行うことができなかったことから、本年度の研究は「やや遅れている」と判断した。 (1)「BACE1阻害剤の開発研究」については、活性の向上は認められなかったが、いくつかの複素環導入誘導体を合成し、構造活性相関を検討することができた。また、4種類全ての立体化学に関して検討を行い、最適構造を同定することができた。 (2)「SARS 3CLプロテアーゼ阻害剤の開発研究」に関しては、本年度の検討では活性評価を行うことはできなかったが、目的化合物が合成可能であることが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
(1)BACE1阻害剤の開発研究では、引き続き3-メチルフェニル誘導体への複素環の導入を検討する。水酸基側置換基への複素環の導入は大幅な活性の低下を引き起こしたため、今後はアミド側置換基への導入を検討する。100 μM以下のIC50値を示す化合物については、BACE1との共結晶を作成し、X線結晶構造解析を行うことで結合構造を同定する。得られたデータを基に新たな分子設計を行うことで、研究の効率化を図る。 (2)SARS 3CLプロテアーゼ阻害剤の開発研究では、ヒドロキシプロリン水酸基のDPM化反応の条件検討を行う。また、置換基を有するジフェニルメタノールの合成を検討し、様々な誘導体合成へと展開する。本化合物は疎水性が高く、溶解性に問題が生じる可能性があるため、構造中へのヘテロ原子の導入を検討する。合成した誘導体は、順次活性評価を行い、ヒドロキシプロリン骨格の新規模骨格としての有用性を検証する。100 μM以下のIC50値を示す化合物については、(1)と同様にプロテアーゼとの共結晶を作成し、X線結晶構造解析を試みる。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由) 新型コロナウイルス感染症の流行の影響で、想定していた研究時間の確保が難しく、十分な数の誘導体合成、活性評価及び、反応条件の検討を行うことができなかった。特にSARS 3CLプロテアーゼ阻害剤の開発研究において活性評価試験を実施する段階まで研究を進めることができなかったため、それらに関する支出が抑えられ、次年度使用額が生じた。 (使用計画) 次年度使用額は、当初の予定通り誘導体合成と活性評価に関する費用として使用する。翌年度分として請求した助成金は、得られた高活性誘導体の構造解析、及びその情報をもとにした更なる誘導体合成と活性評価のための費用として使用する。当初予定から使用用途について大きな変更はない。
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