ヒドロキシプロリンを基盤としたβ-セクレターゼ(BACE1)及びSARS 3CLプロテアーゼ(3CLpro)阻害剤の誘導体合成と活性評価を行い、構造活性相関研究を展開した。 (1)BACE1阻害剤の構造活性相関研究では、これまでに見出した3-メチルフェニル誘導体(IC50 = 179 μM)を基盤として、ビフェニルアミノ基の末端芳香環へのカルボニル基の導入を検討した。末端芳香環のオルト位にメトキシカルボニル基(IC50 = 116 μM)およびカルボキシル基(IC50 = 63 μM)を導入した誘導体では阻害活性が向上し、特に後者においてより大きい活性の変化が認められたことから、オルト位周辺におけるBACE1との新たな静電的相互作用の形成が示唆された。研究期間全体を通して、新規骨格に基づくBACE1阻害剤の構造活性相関情報を取得することができ、更なる高活性誘導体を創出するための足掛かりを得ることができた。 (2)SARS 3CLpro阻害剤の開発研究では、昨年度までに合成した誘導体の活性評価を実施した。その結果、ヒドロキシプロリンの水酸基にジフェニルメチル基を、カルボニル基に3-ビフェニルアミノ基を導入したアクリロイル型阻害剤が最も高い阻害活性を示した(IC50 = 8.7 μM)。アクリロイル基を2-ブチノイル基に変換した誘導体では明らかな活性の低下が認められたが(IC50 = 45 μM)、プロピオニル基に変換した誘導体では活性の低下は僅かであった(IC50 = 13 μM)。これらの結果から、本阻害剤のwarheadとして必ずしもマイケルアクセプターが必要ではないことが示唆された。本研究を通して、共通骨格に基づく阻害剤設計から、一桁μMの活性を有する新規SARS 3CLpro阻害剤を見出すことができた。
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