研究課題
前年度までに,前立腺がん由来の細胞と対応する間質細胞との共培養条件下においては,ロイシノスタチンAが間質細胞由来のcomplex Vに作用し,その結果としてIGF-1の分泌を抑制することを明らかにした.すなわち,complex Vは抗がん剤探索における間質,すなわち正常細胞由来の適切な分子標的となりうることが示された.さらに,共同研究者に依頼し分子レベルでの活性発現機構モデルの構築を行った.ロイシノスタチンAの異常アミノ酸の一つであるAHMODをより単純な構造のアラニンに置換した類縁体(LCS-7)も活性を保持しているが,側鎖構造の大きな変更に伴いcomplex Vとの結合時のペプチド鎖全体のトポロジーがロイシノスタチンAのそれと異なることが示唆された.本年度はロイシノスタチン関連化合物と同様に間質細胞の呼吸鎖阻害により抗がん活性を示すことが判明したインターベノリンについて,研究協力者とともに詳細な作用機序の解析を行った.このインターベノリンはcomplex Iの阻害活性を有し、細胞内ほの乳酸の蓄積と細胞外へと排出を惹起する.酸性化した細胞外のpHをがん細胞の膜に存在するセンサー(GPR132)が感知し、PP2Aの活性化,S6Kが抑制と続く一連のシグナル伝達によりがん細胞の増殖をするものと考えられる.complex Vとともにcomplex Iが抗がん剤の標的として有望であることが示され,またこれは後者の阻害剤数種が臨床試験中であることからも裏打ちされる.以上の成果に基づき,今後の研究では呼吸鎖阻害を機序とした抗がん剤探索に注力していきたい.
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