研究課題/領域番号 |
20K06958
|
研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
三澤 隆史 国立医薬品食品衛生研究所, 有機化学部, 室長 (40709820)
|
研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
|
キーワード | ヘリカルテンプレート / ヘリカル構造 / タンパク質間相互作用阻害剤 / 酵素耐性 / ペプチド |
研究実績の概要 |
ヘリカル構造は天然のタンパク質の構造で最も多く認められ、細胞内での生理機能に深く関与している。そのため、ヘリカル構造の形成を目指した構造制御法は広く研究が進められている。側鎖への架橋構造の導入あるいはa,-a-ジ置換アミノ酸やb-アミノ酸などの非天然アミノ酸をペプチド主鎖に導入することでペプチドのヘリカル構造の形成を促進することが明らかになっている。これらの手法はヘリカル構造を安定化するのみならず、分解酵素への耐性獲得にも寄与し、ペプチド医薬品開発に貢献すると考えられている。しかしながら、生理活性ペプチドに対し、上記の修飾を施すことで生理活性の低下につながる可能性があり、生理活性ペプチドに修飾を加えることなく、そのヘリカル構造を制御する方法が求められている。本研究では、ヘリカル構造の形成を誘導するヘリカルプロモータペプチドの開発とその生理活性ペプチドへの応用を目指した。具体的には核内受容体を標的として、コアクチベータとの相互作用を阻害するペプチドの開発を行った。その中で、既知の阻害ペプチドと同程度の阻害活性を示し、分解酵素等に対する抵抗性を示すペプチドの開発に成功した。また、疎水性のヘリカルプロモータの連結は、ペプチド全体の物性を悪化させる可能性が危惧される。現在ヘリカルプロモータ配列の物性改善を目的とした構造活性相関解析を行っている。本研究の完成は、新たなペプチドデザインに繋がり、中分子ペプチド研究への貢献が期待できる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
これまでにヘリカルテンプレート配列を利用したヘリカル構造制御に関する研究を行ってきた。短い配列でヘリカル構造を誘導するためには、より安定なヘリカル構造を形成させる必要がある。そこで、高いヘリカル構造安定化作用を有する非天然アミノ酸の導入や側鎖上への架橋構造を導入することで、より安定なヘリカル構造を形成することができると考えた。つまり、Aib残基を安定化作用の強い環状ジ置換アミノ酸であるAc5cやAc6cに置換するあるいは側鎖のステープル化を行うことでより高いヘリカル構造安定化作用の獲得を目指した。合成したペプチドの二次構造はCDスペクトルを用いて評価した。その結果、ジ置換アミノ酸の種類によるヘリカル構造への影響が明らかになった。 ヘリカルプロモータ単独とBlockペプチドの二次構造を比較すると、連結したペプチドはヘリカルテンプレートと同様にヘリカル構造を形成していることが示唆された。つまり、ヘリカルテンプレートのヘリカル誘導活性により、ノナアルギニンに対してヘリカル構造の形成を誘起したと考えている。さらに、ヘリカル構造を形成したペプチドに関しては、細胞膜透過性をフローサイトメトリーを用いて評価し、高い細胞膜透過性を示すことが明らかになった。次に、タンパク質間相互作用阻害剤への応用も行い、ヘリカルプロモータ配列の有用性を検討する。標的としては、これまでに当研究室で行っているビタミンD受容体とコアクチベータの相互作用を阻害するペプチドの開発を行った。その中で、VDRとコアクチベータ間の結合を阻害するペプチドの開発に成功した。これらの研究成果から、研究計画通りに順調に進展していると考えられる。
|
今後の研究の推進方策 |
すでに高い細胞膜透過性ペプチドの開発やタンパク質間相互作用阻害剤の開発に成功している。今年度は、ヘリカルテンプレート配列の物性改善やタンパク質間相互作用阻害剤の細胞内での機能化を達成することを目的とする。活性評価系等はすでに確立しており、合成後速やかに活性評価を行う予定である。
|
次年度使用額が生じた理由 |
当該年度においては、ペプチドの構造展開や構造解析およびその生理活性評価を行なったが、その中で、順調に進展したおかげもあり、計画よりも出費を抑えることができた。今年度のさらなる構造展開や細胞を使用した活性評価系へと充当する予定である。
|