研究課題/領域番号 |
20K06958
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研究機関 | 国立医薬品食品衛生研究所 |
研究代表者 |
三澤 隆史 国立医薬品食品衛生研究所, 有機化学部, 室長 (40709820)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | ヘリカルテンプレート / タンパク質間相互作用 / ビタミンD受容体 / 非天然アミノ酸 |
研究実績の概要 |
ペプチドは人体の構成要素の一つであり、受容体やホルモンなどの機能性分子として生体内で様々な機能を果たしている。そのため、ペプチドに着目した化学・生化学的研究が広く進められている。近年では、タンパク質間の相互作用を阻害するペプチドの開発や、膜透過ペプチド(CPP, Cell-penetrating peptide)を利用したマクロ分子の細胞内導入法といった応用研究が報告され、ペプチド分子の機能化は魅力的な研究課題の一つである。ペプチドが機能を発揮するためには機能発現に必要な官能基が空間的に適切な位置に配置されることが必要である。そのため、ペプチド自体の構造を制御する方法論の確立は機能性ペプチドの開発のために必須である。合成ペプチドを用いて天然タンパク質の構造モチーフを具現化するアプローチについて、最も進められているのがヘリカル構造の構築である。代表者はこれまでに、安定なヘリカル構造を形成するペプチドをテンプレートとして、天然アミノ酸からなるペプチドに連結することで、ペプチド全体のヘリカル構造が誘起されることを見出している。そこで、本研究では、生理活性ペプチドのヘリカル構造を安定化する構造修飾およびペプチドの細胞膜透過性向上を志向した細胞膜透過性ペプチドの連結を行い、細胞内で機能しうる生理活性ペプチドの開発を行なった。その結果、核内受容体の一つであるビタミンD受容体のコアクチベータとの相互作用を阻害する新規ヘリカルペプチドの開発に成功した。本ペプチドは、細胞内でVDRの転写活性化を阻害し、VDRの標的遺伝子発現を抑制することを明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、細胞内で作用する生理活性ペプチドの開発を目指し、天然アミノ酸からなるペプチドとヘリカル構造を形成するペプチドを連結することで、ペプチドの二次構造を誘起し、細胞内への取り込み、生理活性の向上を目指すものである。その結果、細胞内でVDRの活性を制御する新規ペプチドの開発が達成された。そのため、本研究課題が順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までに得られたペプチドについて、細胞内におけるその他の転写因子に対する選択性を検討する必要があると考えている。今後本手法を用いて、核内受容体以外の細胞内転写因子を阻害するペプチドの開発を目指している。本研究により、テンプレートペプチドを用いた生理活性ペプチド開発の一般性を示し、新たな生理活性ペプチドのデザイン指針と提案することができる。
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次年度使用額が生じた理由 |
本年度行なった実験では、ペプチド合成および生物実験に使用する試薬の購入および学会旅費を計上していた。一方で、合成や実験が順調に進展したことに加え、covid-19の影響から、Web会議への参加があったため、想定よりも使用額が抑えられたと考えている。さらなる研究の進展が望めることから、次年度への繰り越しを希望した。
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