研究課題/領域番号 |
20K06959
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研究機関 | 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所 |
研究代表者 |
伊勢 知子 国立研究開発法人医薬基盤・健康・栄養研究所, 医薬基盤研究所 創薬デザイン研究センター, プロジェクト研究員 (20771900)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 抗体 / エピトープ / 膜抗原 / 競合結合阻害 / フローサイトメトリー |
研究実績の概要 |
抗体の機能は、その抗体が結合する抗原の部位(エピトープ)に大きく依存している。個々の抗体の抗原結合部位の配列はユニークであり異なっている。多数の抗体を、固有のエピトープに基づき機能的に分類するためには、近傍のエピトープを認識する抗体を、競合的に抗原に結合阻害するグループとして分類する方法が、最も確度が高い方法と考えられている。しかし、競合阻害には、一般に、改変した可溶性の膜抗原が代替抗原として用いられ、生体膜上で発現している膜抗原の天然高次構造を、従来の競合阻害法に用いることは、技術的に困難であった。 本研究は、生体膜上に発現した膜抗原の本来の天然構造を用いて、未精製、無標識抗体の逐次結合アッセイを開発し、簡便かつ膜抗原に普遍的に応用できる新しい機能エピトープ同定法を確立することを目的としている。具体的には、我々が既に抗体パネルを取得している細胞膜タンパク質のひとつであるTNFレセプター2(TNFR2)をモデル抗原とし、下記2つのAimの達成を目指す。Aim1:天然膜抗原を細胞膜に存在する状態で用いて、抗体の競合結合阻害に基づいた蛍光ビーズフローサイトメトリーによるエピトープマッピング法を確立する。Aim2:高次構造が保持されやすいドメインキメラ変異体をデザインし、それらを用いたエピトープ位置のマッピングを行い、Aim1で確立した方法の有用性を比較、検証する。 令和3年度における大きな進捗は、抗原発現量の指標として蛍光タンパク質であるTagBFPを同時発現できる抗原発現プラスミドを作製し、これを細胞導入する方法により、抗体の反応性を、定量的に評価することが可能になった点である。Aim1については、この方法により、競合阻害を高感度で検出することが可能となった。Aim2については、当初予定していたデータの取得がほぼ完了したので、今後は、定量的解析方法の確立に重点を置いていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
令和3年度は、Aim1、Aim2ともに大きく進捗した。 Aim1については、上記の抗原発現量の指標として蛍光タンパク質であるTagBFPを同時発現できる抗原発現プラスミドを作製し、これを細胞導入する方法により、特異的結合している細胞だけをフローサイトメトリーの解析の段階で選別し、解析することが可能となった。また、使用する蛍光ビーズの量を大きく減らすことにより、細胞の生存率を改善し、解析に使用できる生細胞数を増やすことに成功した。こうして実験系を改善することにより、令和2年度に直面した検討課題をクリアすることができた。 Aim2については、令和2年度から着手してきたドメインキメラ変異体の作製を完了し、これらとオルソログの発現プラスミドを用いたフローサイトメトリーを行い、抗TNFR2抗体パネルの個々の抗体の反応性など、当初予定していたデータの取得がほぼ完了、個々の抗体の反応性の違いを明らかにすることに成功した。
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今後の研究の推進方策 |
Aim1については、上記の改善した方法により、競合阻害を高感度で検出することが可能となったので、今後はこの方法で、我々の抗TNFR2抗体パネルの反応性を詳細に解析していく。Aim2については、当初予定していたデータの取得がほぼ完了したので、今後は、これまでに得られたデータを元にして、抗体の反応性の定量的解析方法の確立に重点を置き、クラスター解析を含めたデータ解析方法を確立していく。必要があれば、別のドメインキメラ変異体を追加作製し、さらに詳細なデータ取得を目指す。こう してマッピングされたエピトープ位置の情報とAim1で明らかになる機能情報による抗体のグルーピングの相違を比較することにより、最終的にはAim1で確立した方法の有用性を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)令和2年度に計画していた実験が一部次年度にずれ込んだため。 (使用計画)次年度の物品費として使用する。
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