研究課題/領域番号 |
20K06960
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大西 英博 北海道大学, 薬学研究院, 准教授 (70399955)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ロジウム / アルキン / アルデヒド / ヒドロアシル化 / ラセミ化 / 1-プロパノール / 動的速度論的光学分割 |
研究実績の概要 |
ロジウム触媒とα位に置換基を持つ6-アルキナールとの反応において、添加剤として1-プロパノールを用いると、動的速度論的光学分割が起こり、良好な収率及び不斉収率で7員環ケトンが生成することを明らかにしていた。今年度は、本反応がその他の環サイズの合成に応用可能か検討した。その結果、6員環形成反応は困難ではあったものの、8員環形成反応には応用できることがわかった。また、反応機構に関する研究も行った。すなわち、光学活性な基質とRもしくはSの絶対配置持つ配位子を用いて、それぞれ反応を行ったところ、生成物の絶対配置は配位子によってのみ制御されていることもわかった。さらに、生成物の化学変換に関しても検討した。二価のロジウム触媒及びトリエチルシラン存在下、7員環ケトンとの反応を行うと、シリルエノールエーテルが効率良く得られ、オゾン分解を行うとジケントの合成も可能であった。一方、本研究代表者は、ロジウム触媒によるアリルアルコールと動的速度的光学分割を伴うヒドロアシル化を組み合わせたカスケード反応に関する研究も行ってきている。こちらのカスケード反応に関しても7員形成反応のみ検討に留まっていたことから、基質適用範囲の拡大を目指し研究を行った。BINAP型及びSEGPHOS型などの二座配位子を用いて、側鎖にアルキンを持つアリルアルコールとの反応を行ったところ、いずれの場合もカスケード反応は進行し、良好な収率でα位に置換基をもつ5員環ケトンが得られた。現在のところ、(R)-DADMP-BINAP配位子として用いることにより、収率74%、不斉収率69%で環化体が得られることが明らかになっている。今後、更なる不斉収率の向上を目指し検討を行っていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
動的速度論的光学分割を経由するアルキンの分子内不斉ヒドロアシル化とアリルアルコールの異性化を組みあわせることにより、5員環ケトンが良好な収率及び不斉収率で得られるという新しい反応の開発に成功した。
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今後の研究の推進方策 |
ロジウム触媒によるアルデヒドのラセミ化を利用した反応はいくつか開発できているが、アレンのラセミ化を利用した反応の開発においては、満足のいく成果が得られていない。今後は、アレンのラセミ化を不斉反応に利用した新しい環化反応の開発を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染拡大の影響で当初参加を予定していた学会が中止になり、旅費として支出予定の研究費が余剰となった。また、学生の研究室への立ち入りが制限された影響もあり、試薬など消耗品の支出も減少したため、次年度の使用額が生じた。
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