研究課題/領域番号 |
20K06964
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
上田 善弘 京都大学, 化学研究所, 助教 (90751959)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 分子不斉 / カリックスアレーン / ホスト・ゲスト / ロジウム二核錯体 / C-Hアミノ化 |
研究実績の概要 |
カリックスアレーンはフェノールが2、6位でメチレン架橋された環状オリゴマーであり、その内部空間を生かしてホスト・ゲスト化学における代表的なホスト分子として数多くの研究がなされてきた。例えば配座がお椀型のcone型に固定されている場合、その三次元構造に由来して、置換基の配列に応じた固有のキラリティを持つ。この特徴的なキラリティを持つカリックスアレーン類の分子認識能には興味がもたれるが、中心不斉を構築する反応における不斉触媒としての評価が数例報告されているのみで、分子認識能の評価はほとんど為されていない。このような応用研究の推進に、化合物の量的供給が必須となるが、触媒的不斉合成法は欠如している。本研究では、分子不斉カリックスアレーンの触媒的不斉合成法を開発することで、量的供給を可能にし、新たな分子認識素子としての可能性を探ることを目的とした。今年度は、ロジウム二核錯体を触媒とするC(sp2)-Hアミノ化による、カリックス[4]アレーン誘導体の不斉非対称化に取り組んだ。その結果、カリックス[4]アレーンのlower lim及びupper limにそれぞれ適切な置換基を配置した基質を用いることで、キラルロジウム二核錯体を触媒とする不斉C-Hアミノ化により、90% ee程度の光学純度で分子不斉カリックスアレーンが得られることを見出した。今後は、本反応の基質一般性を調べるとともに、得られた分子不斉カリックスアレーンのキラルホスト分子としての応用研究を検討する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はロジウム二核錯体を触媒とする位置及び化学選択的C(sp2)-Hアミノ化によるσ-対称カリックス[4]アレーン誘導体の不斉非対称化を検討した。カリックス[4]アレーンから一段階で得られるlower lim修飾体を用いて検討を行ったところ、期待通りフェノールのパラ位選択的にアミノ化反応が進行することがわかった。そこで、様々なキラルロジウム錯体を用いて検討を行ったが高い光学純度で生成物が得られる系を見出すことができなかった。そこで、反応点に近い側であるupper lim側に置換基を導入した基質を合成し、検討を行うこととした。設計した基質をカリックス[4]アレーンから5段階で合成し、不斉反応の検討を行ったところ、期待通りエナンチオ選択性の向上が見られ、90% ee程度の光学純度で生成物を与える系を見出した。また、C-Hアミノ化の他にも芳香族臭素化反応による不斉非対称化も検討を行った。未だ効率的な触媒的不斉合成には至っていないが、不斉臭素化反応では光学活性体を与える点に加えて、臭素原子を足掛かりとした変換により多様な誘導体合成が可能となるため、今後も引き続き検討を行う。
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今後の研究の推進方策 |
まずは、触媒的不斉C-Hアミノ化反応の基質一般性の検討を行う。これによって、多様な光学活性アミノカリックスアレーン誘導体の合成法を確立する。また、現在不明なままである、生成物の絶対立体配置の決定を行う。絶対立体配置の決定は、触媒的不斉反応の立体化学経路を含めた反応機構解析や生成物のキラルホストとして性能を探る上で、必須となる情報となるため、光学活性体の単結晶X線結晶構造解析により明らかとする。また、他の触媒的不斉合成法として、芳香族臭素化での非対称化にも取り組む。こキラル触媒としては塩基触媒や酸触媒を網羅的に検討し、高い光学純度で生成物を与える条件を精査するう。これにより、多様な誘導体合成が可能となり、合成できる分子不斉カリックスアレーンの種類は飛躍的に増えると予想される。 合成した分子不斉カリックスアレーンのキラルホストとしての応用研究も随時行う。これまでに合成したアミノカリックスアレーンの官能基及びキラルな内部空間を活かした、特徴的な分子認識能を見出す。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍のため、参加予定の学会が中止あるいは延期となり、旅費を必要としなかった。また、テレワークの実施や研究室の人員のローテションによって、当初の予定ほど実験に必要な消耗品を購入しなかった。今年度も学会の中止やオンライン化が続くと思われ、ほとんど旅費を必要としないと想定される。一方で、研究の進展には実験が不可欠であり、実験室では感染対策を十分に施すことで、感染リスクを十分に減らすことができるため、消耗品費を充当することで、研究の推進に努めたい。
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