研究課題/領域番号 |
20K06966
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研究機関 | 徳島大学 |
研究代表者 |
佐野 茂樹 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 教授 (20226038)
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研究分担者 |
中尾 允泰 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(薬学域), 助教 (60550001)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | HWE試薬 / 立体選択的反応 / リン原子 / イオウ原子 / α,β-不飽和エステル / アレニルエステル / オレフィン化 |
研究実績の概要 |
オレフィン化試薬として有機合成化学分野において汎用されるホーナー・ワズワース・エモンズ試薬(HWE試薬)の化学構造に着目し、HWE試薬の2個のリン原子-酸素原子単結合の両方あるいは一方の酸素原子(第2周期)をイオウ原子(第3周期)に置き換えるという戦略のもと、選択性や反応性において既存のHWE試薬を凌駕する新規HWE型試薬の開発に取り組んだ。 はじめに、リン原子上に2個の同一のオルガノチオ基を有するビス(ベンジルチオ)ホスホリル酢酸メチルおよびその類縁体を合成し、反応系中で調製した各種ケテンとのHWE型反応によるアレニルエステルの合成を詳細に検討した。その結果、ビス(ベンジルチオ)ホスホリル酢酸メチルおよびその類縁体は、グリニャール試薬を塩基として用いる各種ケテンとのHWE型反応により、アレニルエステル誘導体を良好な収率で与えた。 次に、リン原子上に1個のオルガノチオ基と1個のオルガノアミノ基を有するカンファー由来の光学活性1,3,2-チアザホスフィナン誘導体(混合ホスホン酸ジエステル誘導体)を合成し、2-フェニルプロピオン酸クロリド由来のケテンとのエナンチオ選択的HWE型反応を検討した。その結果、目的とするアレニルエステルが34%eeの立体選択性で得られた。リン原子-イオウ原子単結合をリン原子-酸素原子単結合に置き換えた光学活性1,3,2-オキサザホスフィナンを用いた同様のHWE型反応は全く進行しなかったことから、リン原子-イオウ原子単結合のHWE型反応における重要性が示唆された。 さらに、リン原子上に2個の同一のオルガノチオ基を有するビス(ベンジルチオ)ホスホリル酢酸メチルと各種アルデヒドとのHWE型反応の立体選択性は、水素結合能を有する添加剤の有無によって大きく変化することを見出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リン原子上に2個の同一のオルガノチオ基を有するビス(ベンジルチオ)ホスホリル酢酸メチルおよびその類縁体のHWE型反応によるアレニルエステル合成の有用性を明らかにした。また、光学活性1,3,2-チアザホスフィナン誘導体(混合ホスホン酸ジエステル誘導体)のエナンチオ選択的HWE型反応の予備的実験結果を得た。さらに、ビス(ベンジルチオ)ホスホリル酢酸メチルと各種アルデヒドのHWE型反応において、水素結合能を有する添加剤が立体選択性に与える効果を見出した。 したがって、新型コロナウイルスの影響で研究活動に遅延が生じたものの、当初の計画の主要な部分についての新知見が得られたことから、本研究はおおむね順調に進展していると判断した。
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今後の研究の推進方策 |
リン原子上に1個のオルガノチオ基と1個のオルガノアミノ基を有するカンファー由来の光学活性1,3,2-チアザホスフィナン誘導体(混合ホスホン酸ジエステル誘導体)のエナンチオ選択的HWE型反応を検討する。 光学活性1,3,2-チアザホスホリジン誘導体(混合ホスホン酸ジエステル誘導体)の合成を検討する。 ビス(ベンジルチオ)ホスホリル酢酸メチルと各種アルデヒドのHWE型反応において、水素結合能を有する添加剤が立体選択性に与える効果の詳細を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
(理由)前年度と同様、新型コロナウイルス感染症の影響により研究活動が遅延したため、次年度使用額が生じた。 (使用計画)本年度中に十分検討できなかったカンファー由来の光学活性1,3,2-チアザホスフィナン誘導体(混合ホスホン酸ジエステル誘導体)の合成ならびにエナンチオ選択的HWE反応への応用を、当初の研究計画に加えて次年度に実施するため、次年度研究費(物品費)と合わせて使用する予定である。
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