研究課題/領域番号 |
20K06968
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研究機関 | 岐阜薬科大学 |
研究代表者 |
山口 英士 岐阜薬科大学, 薬学部, 講師 (10737993)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 量子ドット / 光触媒反応 / ペロブスカイト |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、量子ドットの光触媒としての利用に向けた基盤構築と応用展開である。この目的に対し、本研究では量子ドットの光触媒としての機能の完全な制御方法を解明し、オーダーメイド光触媒として精密合成反応への応用に向けた基盤研究を実施する。 この課題に対し、昨年度はペロブスカイト構造(CsPbX3)をベースとした量子ドットの合成に取り組んだ。多様な組成、粒子径の量子ドットはホットインジェクション法を利用し合成した。また、多様な粒子径と添加剤を用いた量子ドットに関しても別途ホットインジェクション法により合成した。合成した量子ドットは、UV/Visスペクトル、蛍光スペクトルを測定し、その光化学的性質から粒子径や反応性に関する基礎的なデータを収集した。また、合成した量子ドットを走査電子顕微鏡による測定をすることで、合成した量子ドットの粒子径の分布が比較的シャープであることも明らかにした。 また、合成したすべての量子ドットを光触媒として用い、アリールハライドの水素化反応を利用してベンチマークテストを実施した。当初の予想通り、量子ドットの組成を還元力が高くなるようにCsPbX3のハロゲンXの塩素の比率を高くすることで反応性が高くなることが実験的に明らかになった。また、様々なアリールハライドを用いた実験により、基質の適用範囲と量子ドットの物性の相関関係の解明に対し取り組み現在検討中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上述したように、 昨年度は量子ドットを光触媒として利用すための系統的な物性の解明研究を行った。 コロナの影響もあり、いくつかの物性測定を学外で測定することができなかったものの、多様な粒子径、組成、添加剤を有するペロブスカイト量子ドットを合成し、その光化学的性質の解明に向けた検討を行った。また、走査型電子顕微鏡による測定を行い、合成した量子ドットの粒子径の分布は比較的シャープであることも同様に明らかにしている。 また、合成した様々な量子ドットを基盤とした光触媒反応への展開の足がかりとして、アリールハライドの水素化反応を利用した触媒のベンチマークテストをおこなった。結果として当初の予想通り、粒子径、組成を変化させることで大きく触媒活性は変化することが明らかになった。また、その基礎的な光物性と反応性との相関関係の解明研究も同様に進行中である。 以上のように量子ドットの光触媒としての利用に向けた基盤構築と応用展開に関する研究に関し、今年度の進捗状況は概ね良好である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は、 昨年度から引き続い量子ドットの光触媒への応用に関する研究を行うとともに、ペロブスカイトの構成元素をより無害化した量子ドットの開発も目指す。 ペロブスカイト構造は、優れた物性を示すが一般的にはSnやPbなどの環境負荷が高い元素の使用が必須である。ペロブスカイト量子ドットを汎用性がある光触媒として利用するために、より環境負荷の低い元素での代替を目指し以下の検討をする。 ・バルクのペロブスカイトではすでに知られている、鉄や銀など低毒性の金属元素を利用し、産業、工業的に利用可能な量子ドット合成法の開発をする。 ・合成した量子ドットの各種物性を測定し、構造、物性の相関関係の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウィルスの影響で、実験に使用する試薬、学会などの旅費等に使用することができなくなったため次年度に合わせて使用する予定である。
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