研究課題/領域番号 |
20K06970
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研究機関 | 北里大学 |
研究代表者 |
石山 亜紀 北里大学, 感染制御科学府, 特任助教 (70300746)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | Target protein fishing / 原虫感染症 / マラリア原虫 / 作用標的 |
研究実績の概要 |
抗マラリア薬探索の過程で慢性骨髄性白血病治療薬として用いられているBcr-Ablチロシンキナーゼ阻害薬のnilotinibが抗マラリア原虫活性を示すことを見出した(J. Antibiot., 2014 報告済)。一方で、マラリア原虫にはチロシンキナーゼが存在せず、nilotinib は新たな作用メカニズムで抗マラリア原虫活性を示すと期待される。抗マラリア作用標的を明らかとすることで新たな創薬ターゲットを開拓し薬剤創出のためのスクリーニングへ応用することを目的とし研究を進めている。 マラリア原虫の細胞質タンパク質画分を用いたTarget protein fishingによって取得されていたnilotinib結合タンパク質pfeIF4Aのバリデーションを進めた。pfeIF4AはDNAおよびRNAヘリカーゼ活性を示す45Kdaのタンパク質で、マラリア原虫にとって必須である。pfeIF4Aのクローニングが終了し、タンパク発現のため大腸菌BL21(DE3)[pLysS]にトランスフェクションを行いPCRにて目的の遺伝子を確認した。2xYT培地 400mLスケールで培養を行い、Abs.600 (<0.6) で500mM IPTGを添加しタンパク誘導を行った。培養後は菌体を回収し6-His tagged pfeIF4A(His6-pfeIF4A)の精製を行なった。His6-pfeIF4Aのヘリカーゼ活性およびATPase 活性を確認するためにアッセイ系の再構築を行っており、nilotinibが阻害作用を示すか確認する。 新たな知見としてnilotinibの抗マラリア作用標的が明らかとなると共に、本活性評価系による化合物あるいは微生物培養液を用いたスクリーニングが進むことで真に効果のある抗マラリア剤の創出につながると期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
Nilotinib結合タンパク質pfeIF4Aのバリデーションを進めるため、6-His tagged pfeIF4A(His6- pfeIF4A)のタンパク発現、精製取得を行った。 His6- pfeIF4Aは培養ロットにより生産量が異なり、かつ少ない傾向にあるため十分な量を確保するまでに至っていない。今後のスクリーニングに応用するには改善が必要である。 精製後のHis6-pfeIF4Aは非常に不安定で、保存後の凍結溶解によって分解が進む。アッセイ系の再構築では再現が取れるよう留意する必要がある。 Nilotinib耐性株の取得はIC50x10倍のnilotinibを用いたチャレンジとマラリア原虫の再増殖を繰り返し、5タームまで行ったが、耐性化に至らなかった。再度、耐性化の検討を行えるように各段階でマラリア原虫株およびDNAを保存している。
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今後の研究の推進方策 |
Nilotinib結合タンパク質pfeIF4Aのバリデーションを進める。具体的には6-His tagged pfeIF4A(His6-pfeIF4A)取得のための培養検討、取得したHis6- pfeIF4Aを用いたヘリカーゼ活性およびATPase 活性アッセイ系の再構築、nilotinibとの相互作用を確認する。スクリーニングを想定し、ゲルシフトアッセイ(ヘリカーゼ活性測定)から96~384wellベースのアッセイ系の構築を検討する。 Nilotinib以外の抗原虫活性物質を用いたTarget protein fishingを検討する。 トリパノソーマ原虫類を用いたTarget protein fishingの最適化を検討する。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナの影響で出張が無くなったことから、派生する旅費も無くなり、従って使用しなかった。今年度、次年度に旅費が発生する場合は旅費として使用するが、発生しなかった場合は物品費、謝金、その他で有効に使用する。
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