研究実績の概要 |
(1)歪みの解消を駆動力とする分子間Cope型ヒドロアミノ化反応の開発と生体直交型反応への展開:まず、シクロオクチン誘導体とモノアルキルヒドロキシルアミンの分子間反応で分子間Cope型ヒドロアミノ化を経由して、ニトロンを得る反応を開始した。しかし、今年になり、ジアルキルヒドロキシルアミンと末端アルキンの Cope型ヒドロアミノ化によるエナミンオキシドの生成およびジアルキルヒドロキシルアミンとシクロオクチンの Cope型ヒドロアミノ化によるエナミンオキシドの生成反応が相次いで報告された[ACS Central Science, 2021, 7(4), 631-640; J. Am. Chem. Soc. 2021, 143(15), 5616-5621. ]。そこで、今後は歪んだアルケンとしてトランスシクロオクテンを用いて本反応を検討する。 (2)ヘテロCopeヒドロアミノ化反応の開発とクリック反応への展開:適切なジポラロフィル子存在下、イソシアネート類とオキシム反応によりCope型ヒドロアミノ化反応を起こさせ、ニトロンを系内で発生させ、これを直ちに1,3-双極子付加環化反応に用いるという反応の検討を行っている。未だ最適化はできていないものの、ブタナールオキシムとジメチルアセチレンジカルボキシレートの混合物に室温でヘキシルイソシアネートを加え攪拌すると、70%を超える収率で分子間付加環化体が得られることがわかった。この反応は、オキシムを直接アシル化剤と反応させて、N-アシルニトロンを発生し、分子間付加環化反応に利用できた最初の例となる。この反応は、オキシム、イソシアネート、ジポラロフィルの3成分を一挙に反応させるもので、ライブラリ合成に適するものと考えられる。
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