研究実績の概要 |
(1)歪みの解消を駆動力とする分子間Cope型ヒドロアミノ化反応の開発と生体直交型反応への展開:シクロオクチン誘導体とモノアルキルヒドロキシルアミンの分子間反応で分子間Cope型ヒドロアミノ化を経由して、ニトロンを得る反応を開始した(2020年度)。しかし、ジアルキルヒドロキシルアミンと末端アルキンのCope型ヒドロアミノ化によるエナミンオキシドの生成およびジアルキルヒドロキシルアミンとシクロオクチンの Cope型ヒドロアミノ化によるエナミンオキシドの生成反応が相次いで報告された[ACS Central Science, 2021, 7(4), 631-640; J. Am. Chem. Soc. 2021, 143(15), 5616-5621. ]。そこで、歪んだアルケンとしてトランスシクロオクテンを用いて検討を続けたが、トランスシクロオクテンの不安定さもあり、うまくいっていない。現在は、集積二重結合であるアレンとの反応を検討したが、反応性が悪かった。 (2)ヘテロCopeヒドロアミノ化反応の開発とクリック反応への展開:適切なジポラロフィル子存在下、イソシアネート類とオキシム反応によりCope型ヒドロアミノ化反応を起こさせ、ニトロンを系内で発生させ、これを直ちに1,3-双極子付加環化反応に用いるという反応の検討を行ってきた。その結果、約30例の反応を行うことができた(最高収率94%)。計算化学を用いて、オキシムとイソシアネート類の反応でニトロンが生じる反応の遷移状態を求めることができた。 さらに、イソシアナートとアルキルヒドロキシルアミンとの反応も同形式で進行し、対応するアルキルアミンの反応よりも速かった。さらに計算化学により、イソシアナートとアルキルヒドロキシルアミンとの反応の遷移状態は、アルキルアミンのものよりも約4 kcal/mol安定であることも明らかにした。
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