研究課題/領域番号 |
20K06976
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研究機関 | 武蔵野大学 |
研究代表者 |
重久 浩樹 武蔵野大学, 薬学部, 講師 (60612471)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2024-03-31
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キーワード | 有機化学 |
研究実績の概要 |
近年創薬研究の分野では4員環構造が注目を集めている。例えばオキセタンはgem-ジメチル基やカルボニル基の生物学的等価体として知られ、代謝安定性や水溶性の問題解決の一翼を担っている。4員環構造はひずんだ構造をもつため、合成難易度が高い。そこで、本研究の目的は、申請者が確立したMHAT/RPCのコンセプトを用いることによって、医薬品研究で重要なオキセタンなどの4員環含有化合物を効率的に合成することである。具体的には「(1)4員環構築反応の開発」、「(2)4員環ビルディングブロックとアルケンの連結反応の開発」、「(3)キラルコバルト触媒を用いた4員環生成物の立体制御」 が挙げられる。 昨年度は(1)4員環構築反応の開発を中心に検討を行った。本研究ではホモアリルアルコール由来のオキセタンだけでなく、医薬品研究では同様に重要と考えられているアゼチジン類の合成も試みた。原料のホモアリルアミンは窒素原子上にトシル基を必要とすることがわかった。両4員環構築反応はエンタルピー、エントロピーいずれの点でも不利と言われているが、特に多置換4員環複素環を合成するには優れた方法であることがわかった。基質一般性検討によって創薬研究で重要とされるスピロ体は合成可能なことがわかった。保護基を持つ複数の生成物に対して脱保護を行い、4員環ビルディングブロックを合成できることも確認した。反応機構の観点では重水素実験およびDFT計算の結果を用いて4員環形成段階を中心に考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
コロナ禍の影響から研究体制が戻りきらず、立案当時からは研究が遅くれているが、昨年度は「(1)4員環形成反応」で論文投稿を完了している。現在は(1)の研究で見えてきた一般性の問題解決について引き続き調査中である。 (2)については立案後の他の研究グループからの報告があったため、成果の高いインパクトが期待できないため、(1)と当時に(3)を優先的に研究を進めることとした。
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今後の研究の推進方策 |
残された研究計画を進めるためにはDFT計算による議論が必要なため、計算環境の整備を計画している。特に(3)では多段階の工程を必要とする配位子を合成する必要があるため、DFT計算によってあらかじめ適切な構造を予測して効率的に研究を進めたいと考えている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響によって本計画立案当時からは遅れている。しかし昨年度は「(1)4員環構築反応」の研究が進み、論文が受理されている。この知見をもとに、特に不斉反応への展開を計画している。そのためにワークステーションを購入して、DFT計算のための環境を整備し、効率的に研究を進める予定である。
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