研究実績の概要 |
創薬研究の分野で注目を集めている4員環複素環構造の合成法に関する研究を行った。本研究では「(1)4員環構築反応の開発」と「(2)キラルコバルト触媒を用いた4員環生成物の立体制御」に焦点を絞った。昨年度、コバルト触媒、酸化剤、シリルヒドリド試薬を組み合わせた反応条件により、オキセタンとアゼチジンを合成可能なことを明らかにしている。今年度は基質一般性に加えて、反応機構研究としてDFT計算を行うことによって鍵中間体であるカチオン性4価アルキルコバルト錯体からの環化について活性化障壁を評価した。この過程はアルケンの構造に大きく依存し、2,2-二置換アルケン由来の場合よりも一置換アルケン由来のほうが明らかに活性化障壁が高くなることがわかった。このことは一置換アルケン由来のときに目的物がほとんど得られない実験結果と一致する。以上のように量子化学計算の観点からも反応機構に関する貴重な情報を得ることができた。
(2)キラルコバルト触媒については既存のサレン配位子を用いることによってキラルな4員環の合成を試みた。過去に知られているキラルジアミンを導入した配位子を用いてに種々の検討を行った結果、現在までに目的物を得ることはできていない。一置換アルケン由来の場合は前述したように高い活性化障壁に加えて、おそらく生成物の安定性にも不安が残る。今後は基質のデザインや量子化学計算なども駆使しながら引き続き不斉化を実現したいと考えている。
|