本研究は,生体内での物質変換を可能とする光技術・分子技術を確立することを目標とし,難病ライソゾーム病の光治療薬・光治療法を開発することである。本研究の目的達成に向けて,報告者がこれまで独自に開発した色素骨格の架橋型キサンテン系色素 (Bridged Xanthene: BX) と縮環型シアニン系色素 (Condensed Cyanine: CCy) の合成,光物性,機能解明に取り組み,本素群が近赤外光に応答して,光レドックス触媒能を発現することを明らかとした。1年目と2年目は,BXを母核構造とした近赤外吸収色素の合成と光レドックス触媒機能の開発に取り組み,BEYを光触媒とした芳香族ジアゾニウム塩のアリール化反応を検討した結果,光照射光源として,可視から近赤外域の光でも反応が効率よく進行するなど,近赤外光を光反応に活用する優位性を示した。また最終年度は,CCyの光レドックス触媒能を調査するにあたり,本色素群の効率的合成を目指した反応条件の確立と誘導化,並びに光物性の解析を行った。ABPXを基質とし,硫酸酸性条件下でエステル化と,続くグリニャール試薬を用いた求核反応により,アルキル基が導入された誘導体が得られた。また同反応条件のもと窒素上の置換基が異なる誘導体を合成し,吸収/蛍光スペクトルを測定した結果,本色素群は,近赤外域に強い蛍光性を有する特徴をもつことを見いだした。またCCyを光触媒として,酸化的aza-Henry反応の脱水素型クロスカップリング反応に適用した結果,炭素-炭素結合形成反応が効率よく進行することを見いだした。
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