研究課題/領域番号 |
20K06979
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研究機関 | 名城大学 |
研究代表者 |
北垣 伸治 名城大学, 薬学部, 教授 (20281818)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ビスチオウレア / 面不斉 / 不斉合成 / 酸-塩基複合型触媒 / [2.2]パラシクロファン / ドミノ反応 / 二重水素結合供与触媒 |
研究実績の概要 |
1. ホスフィンの求核性を利用する酸-塩基複合型触媒の開発 2つのベンゼン環のパラ位をエチレン鎖で架橋した構造をもつ[2.2]パラシクロファン(pCp)を基本骨格とし、その両擬オルト位にチオウレイド基を直結させたpCp-ビスチオウレア触媒1は、外部塩基と組み合わせた使用により、ニトロアルドール反応やニトロアルカンのマイケル付加反応に対し優れたエナンチオ選択性を示す。今回、1では好結果が得られない反応系において高反応性、高選択性を得るための方策として、pCp-ホスフィン-チオウレア触媒2を設計した。ホスフィノ基は、そのままではブレンステッド塩基性を示さないが、求電子剤に付加することで生成するアニオン複合体が塩基性を示すと考えられる。このホスフィン-求電子剤複合型塩基を分子内に有するin-situ調製型pCp-酸塩基触媒を用いて各種不斉触媒反応を検討することとした。触媒2を合成し、3-フェニルインドリン-2-オンのアゾジカルボン酸ジエチルまたはメチルビニルケトンへのマイケル付加反応に適用したところ、トリフェニルホスフィンのみやトリフェニルホスフィンとアキラルなチオウレアの組み合わせ触媒を用いた時よりも反応速度が速く、高収率で目的物を得ることができた。ただし、不斉収率は乏しい結果となった。 2. 面不斉pCp-ビスチオウレア触媒を用いた新規ドミノ反応 昨年度、ニトロエタンのマイケル付加反応において、オルト位にα,β-不飽和エチルエステルまたはα,β-不飽和メチルケトンを有するニトロスチレンを基質に用いると、マイケル付加が連続的に進行し、4連続不斉中心を有する光学活性インダン化合物を最高不斉収率91%で得ることに成功した。今年度は、用いるニトロアルカンや不飽和エステルの種類の変更、スチレンのベンゼン環上の置換基導入の検討を行った。その結果、高い一般性を有することがわかった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
既存のpCp-ビスチオウレア触媒の構造修飾として、より水素結合の強度を増加させるべく設計したビス(N-トシルウレア)や、水素結合の数を2つから3つに増やしたビス(ウレア-トシルアミド)では、それらを用いた触媒反応で良好な結果が得られなかった。これを、計算化学で検証したいが、未だに研究が進んでいない。これは、共同研究者が長期間体調を崩していることに加え、研究代表者本人も体調不良で1か月研究に従事できなかったことが理由である。また、ホスフィンの求核性を利用する酸-塩基複合型触媒の開発では、試みた反応系において高い反応性を確認したが、立体選択性の制御は達成できていない。
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今後の研究の推進方策 |
1. ホスフィンの求核性を利用する酸-塩基複合型触媒の開発 pCp骨格にチオウレアとホスフィンを擬オルト位にそれぞれ直結させた酸-塩基複合型触媒では、試した反応系において不斉誘起のレベルが低い結果となった。そこで、その理由を解明すべく、本触媒の他の反応系への適用を検討するとともに、構造修飾を行う。新たに試す反応系としては、インドリノンのアレニルエステルへのγ付加、活性メチレン化合物のマンニッヒ型反応などである。 構造修飾では、pCp骨格と官能基との間にスペーサーとしてベンゼン環を挿入する。また、酸触媒部位として、チオウレアの代わりにアミドやスルホンアミド、フェノール等を用いる。 2. 面不斉pCp-ビスチオウレア触媒を用いた新規ドミノ反応 令和2年度に見出したニトロアルカンのマイケル付加-マイケル付加の連続反応は、インダン構造を含む4連続不斉中心を一挙に構築する反応であった。今年度はクロマン構造を含む4連続不斉中心の一挙構築について調査する。クロマン構造も光学活性医薬品や天然物に含まれることが知られているため、それらの短工程合成に利用できる可能性がある。
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次年度使用額が生じた理由 |
次年度使用が生じた理由は、共同研究者が長期間体調を崩していることに加え、研究代表者本人が体調不良で1か月研究に従事できなかったことが理由である。次年度は、新たな共同研究者とともに、研究のスピードアップを図る。
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