研究実績の概要 |
1. ホスフィンの求核性を利用する酸-塩基複合型触媒の開発 2つのベンゼン環のパラ位をエチレン鎖で架橋した構造をもつ[2.2]パラシクロファン(pCp)を基本骨格とするpCp-ホスフィン-チオウレア触媒(1)は、ホスフィノ基が求電子剤に付加することで生成するアニオン複合体がブレンステッド塩基として働く可能性があることから、in-situ調製型pCp-酸塩基触媒としての可能性を秘めている。これまでに1を用いて3-フェニルインドリン-2-オンのマイケル付加反応を行った結果、トリフェニルホスフィン(2)のみや2とアキラルなチオウレアの組み合わせ触媒を用いた時よりも反応速度が速く、高収率で目的物を得ることができたが、不斉収率は乏しかった。今回、インドリノンの付加反応の相手としてアレニルエステルを用いたところ、2ではアレンのγ位に付加した生成物が優先して得られるが、触媒1ではβ付加体が主生成物となることがわかった。このように独自の反応性を有することが確認されたが、この反応系でも不斉誘起は殆ど起こらなかった。 2. 面不斉pCp-ビスチオウレア触媒を用いた新規ドミノ反応 本研究の初年度に、pCp-ビスチオウレアを触媒とするニトロエタンのマイケル付加反応において、オルト位にα,β-不飽和エチルエステルまたはα,β-不飽和メチルケトンを有するニトロスチレンを基質に用いると、マイケル付加が連続的に進行し、4連続不斉中心を有する光学活性インダン化合物を最高不斉収率91%で得ることに成功していたが、収率が40%程度であった。今回、反応条件を精査した結果、ベンジルエステルおよびメチルケトンの基質において、エナンチオ選択性を維持したまま収率を50~70%にまで改善することができた。また、ニトロスチレンのベンゼン環上p位にシリルオキシ基を導入した基質では、最高値である92%の選択性が得られた。
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