研究課題
メタクリル酸コポリマーであるEudragit E PO (EUD-E)は、過飽和状態にある薬物の結晶化を効果的に抑制し、薬物過飽和状態を長時間維持する。本年度は、EUD-Eの液中構造がfelodipine (FEL)の結晶成長抑制作用に及ぼす影響を評価した。pH 4.5と比較して、pH 6.0のEUD-E溶液では長時間高いFEL過飽和度が維持され、強いFEL結晶成長抑制作用を示した。pH 4.5及びpH 6.0 EUD-E溶液のSAXSプロファイルをKratky plotにより解析した結果、いずれのpHにおいても、EUD-E鎖が水溶液中においてfoldingしていることが示された。また、pH 4.5と比較してpH 6.0において極大位置が低角側へシフトした。pH 4.5と比較してpH 6.0でポリマー鎖がより凝集した状態にあると考察した。また、EUD-E濃度依存的な液中構造変化は小さかった。EUD-E溶液を添加したFEL結晶界面の液中原子間力顕微鏡（AFM）測定を行った結果、ナノサイズの構造体が認められ、EUD-E分子がFEL結晶界面に吸着していた。また、pH 4.5と比較してpH 6.0のEUD-E溶液を滴下したFEL結晶界面において、より大きなEUD-E構造体が観察され、広範囲でFEL結晶界面がEUD-E構造体により被覆されることが示された。いずれのpHにおいても、EUD-E濃度増加に伴いFEL結晶界面に吸着したEUD-E構造体のサイズは増大したが、特にpH 6.0では構造体のサイズの増加が顕著であった。FEL結晶界面において、EUD-Eが疎水性のコア部分にFEL分子を取り込むことでEUD-E構造体の物性が変化し、疎水性相互作用を介したEUD-E同士の凝集が引き起こされたと推察した。
2: おおむね順調に進展している
今年度はメタクリル酸系ポリマーについて評価を行った。ｐHに依存したポリマーの構造と結晶化抑制作用にとの関係性を実験的に明らかとすることができ、計画通り検討を進められている。
これまでに実施したアミノアルキルメタクリル酸コポリマーについて、EUD-E構造体形成に及ぼす薬物の影響や相互作用部位等を明らかにするため、計算科学と取り入れた評価を行っていく予定である。
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Mol. Pharm.
巻: 18 ページ: 4111-4121
10.1021/acs.molpharmaceut.1c00526
