研究課題/領域番号 |
20K06988
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
小池 透 広島大学, 医系科学研究科(薬), 教授 (90186586)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | リン酸化生体ぶんし / タンパク質の翻訳後修飾 / プロテオミクス / フォスタグ / チオタグ |
研究実績の概要 |
複雑な生命現象を制御するタンパク質翻訳後修飾の全体像の解明は,次世代の重要な研究課題である。タンパク質のリン酸化などをスイッチとする生体機能制御の研究は,癌や免疫疾患などの原因究明,治療薬の開発,iPS細胞の分化制御などを目的として,グローバルな研究組織で精力的に進められている。リン酸化やアセチル化などの翻訳後修飾に関連した酵素反応の解析法には,蛍光色素などで標識した人工基質や阻害剤が用いられている。実用的に使用可能なそれら解析法の数は,極めて限られている。一方,アシル化やリン酸化された反応生成物(天然型タンパク質)の解析には,電気泳動法や免疫学的手法など専門的な分析技能と時間と手間がかかる分析法が用いられている。そのよう な翻訳後修飾をターゲットとした調節分子(活性化や不活性化分子)の化合物評価は,次世代の重要な研究課題の一つである。 本研究では,これまでに開発した蛍光発色基を有するフォ スタグ(リン酸基捕捉分子)およびチオタグ誘導体(チオール捕捉分子)を使用する。そ れら亜鉛錯体化合物を用いて翻訳後修飾調節分子の迅速スクリーニング法を開発することを目的としている。 当該年度の研究実績:フォスタグ分子のリン酸化ペプチドに対する配列特異性について,異なるリン酸基捕捉剤(チタニア)との相違点について新しい知見を得た。AMPを捕捉したフォスタグの溶液内平衡と結晶構造解析に成功した。チオタグの結晶構造解析を行い,チオールの結合部位の構造学的特性を解明した。人由来の培養細胞内でリン酸化酵素とその基質タンパク質の同時発現系を複数構築し,それら細胞内の翻訳語修飾過程をフォグタグを用いて分析する手法を開発した。また,キナーゼと基質タンパク質の遺伝子を合わせ持つプラスミドを複数作成し,大腸菌内でキナーゼ反応を行うシステムを構築し,キナーゼ阻害剤の新しいスクリーニング法を開発した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ほぼ計画通りに研究が進み,新規のタンパク質リン酸化反応解析法を複数開発できている。フォスタグを使った研究技術開発は順調に進んでいるが,チオタグを使った方法では,チオールの酸素酸化などの不安定性などに起因した再現性の問題が発生している。今後,還元剤との組み合わせなどを検討し,それらの問題点を克服していきたい。
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今後の研究の推進方策 |
最終年度は,開発に成功したリン酸化タンパク質解析法に関する実用的なプロトコルと実施例を作成する。それら実施例では,阻害剤プロファイリングや活性化プロファイリングの分析条件についても詳細な検討を行う。また,フォスタグとチオタグを組み合わせた新しい分析法についても検討を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響で旅費の必要がなくなったため,計画以上に進んでいる研究の消耗品として利用させていただきたい。
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