研究課題
複雑な生命現象を制御するタンパク質翻訳後修飾の全体像の解明は,次世代の重要な研究課題の一つである。タンパク質の可逆的リン酸化やアセチル化などをスイッチとする生体機能制御の研究は,癌や免疫疾患などの原因究明,治療薬の開発,iPS細胞の分化制御などを目的として,グローバルな研究組織で精力的に進められている。リン酸化やアセチル化などの翻訳後修飾に関連した酵素反応の解析法には,蛍光色素などで標識した人工基質や阻害剤が用いられている。しかし,実用的な解析法の数は,極めて限られている。そのような翻訳後修飾をターゲットとした調節分子の化合物評価は,医薬品開発企業や生命科学に関する研究施設で盛んに行われている。本研究では,オリジナルに開発した蛍光発色基を有するフォスタグおよびチオタグ誘導体を分析プローブとして使用した。当該最終年度の研究実績:2種類のマイクロビーズ-フォスタグに配位したリン酸化生体分子の結合および解離の速度論に関する新しい知見を得た。それらマイクロビーズは,リン酸化生体分子の1ビーズ分離分析法を可能にする機能性分子である。さらに、新規チオタグ誘導体の結晶構造解析を行い,チオールの結合部位の構造学的特性を解明した。各種培養細胞系で発現させたリン酸化酵素のリン酸化状態の解析をフォグタグを用いて分析する手法を開発した。この手法は,活性型キナーゼの調製法における重要な知見を与えるものである。本研究室補助事業期間(3年間)全体を通じて、オリジナルな亜鉛錯体化合物を複数合成し、それらを用いた翻訳後修飾調節分子の迅速スクリーニング法の開発に必要な化学的基礎データを取得した。そのデータを基礎として、キナーゼ反応に関与する人タンパク質のリン酸化プロファイリング法やキナーゼ阻害剤スクリーニングに使用できる迅速マイクロビーズ分析法を新たに開発することができた。
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 5件)
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