本研究課題においては、LC-MS/MSによる修飾核酸プロファイル法の確立と、本法を応用した新たな肺がん診断法の開発を目指している。 修飾核酸は、RNAの構成成分であるリボヌクレオシドにメチル化などの転写後修飾が加わったもので、150種類以上知られている。修飾核酸の発生は成長や生体の環境変化に伴うと予想されており、酸化ストレスや様々な疾患と修飾核酸についての報告がなされている。このことは、血中修飾核酸量の変動が生体の様子を反映している可能性を示す。また、RNA上で発現した修飾核酸は代謝によりモノヌクレオシド化されて血中へと放出されていく。つまり、生体中の修飾核酸量の把握、修飾核酸プロファイル解析が疾患および病態解明につながるものと考えられる。 本研究においては、前年度までにLC-MS/MSによる19種の血漿中修飾核酸一斉定量系を確立し、開発した定量系によって肺がん診断が可能であることを示した。最終年度は、開発した一斉定量系の応用として他の肺疾患に応用すべく、COPD患者を対象にバイオマーカー候補を評価した。併せて定量系の改良を行った。東北大学病院のCOPD患者20名と健常者(非喫煙、喫煙)20名の血漿検体について、改良した定量法により修飾核酸を定量した。その結果、 COPD患者(Stage3)と非喫煙患者・喫煙患者との間に有意差のある修飾核酸を4種発見した。 本研究で確立された修飾核酸一斉定量系により、COPDの診断の可能性が示された。今後はサンプルサイズを増やすことで、肺がんとの鑑別が可能かを検討するとともに、予測診断モデル式の算出を行う予定である。
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