研究課題/領域番号 |
20K06999
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
吉田 卓也 大阪大学, 薬学研究科, 准教授 (00294116)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | LAIR / NMR / X線結晶構造解析 / MDシミュレーション |
研究実績の概要 |
本研究では、leukocyte-associated immunoglobulin-like receptor(LAIR)ファミリーが担うコラーゲン依存的な免疫抑制メカニズムの構造基盤を明らかにすることを目標に、LAIRの特異な動的構造が担うコラーゲン認識メカニズムと、免疫抑制シグナルの発信に重要な、コラーゲンを介したLAIR分子同士の相互作用の詳細解明に取り組んでいる。今年度は昨年度に引き続き、hLAIR-2コラーゲン結合ドメイン(LAIR2-CBD)に対し複数のコラーゲンモデルペプチドを用意し、それらとの共結晶化を試みたが、適切な結晶が得られなかった。そこで、NMRによる化学シフト摂動の情報を用いて、1:1の結合モデルを作成し、Steered Molecular Dynamics による解離シミュレーションにより、LAIR2-コラーゲンモデルペプチド間の結合自由エネルギーを評価した。今後はさらにこの手法により、結合親和性のコラーゲン配列依存性を検討していく。一方、NMRによる相互作用解析では、モデルペプチドの配列に依存して、LAIR2-コラーゲンモデルペプチドの相互作用が所謂遅い交換状態になること、また1つのコラーゲン三重らせん構造に対し、複数のLAIR2-CBDが結合する状態となっていることが示された。このことは、コラーゲンモデルペプチド上でLAIR2分子どうしが相互作用し、結合を強める可能性を示唆しており、LAIR2のデコイ受容体としての機能を考える上で興味深い知見である。また、これらのデータを基に新たな複合体モデルの構築を試みた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
hLAIR-2-CBDとコラーゲンモデルペプチド複合体の適切な共結晶が得られていないが、NMR相互作用解析により、1つのコラーゲン三重らせん構造に対し、複数のLAIR2-CBDが結合することがその理由の一つであると考えられた。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の相互作用解析で得た結合パラメータを基に、より適切な条件でのhLAIR-2-CBDとコラーゲンモデルペプチド複合体共結晶化について引き続き取り組んでいく。さらに、新たに構築した結合モデルを検証するため、常磁性緩和を利用したNMR解析と、変異体を用いた相互作用解析を進めていく。
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次年度使用額が生じた理由 |
複合体結晶化に適したペプチド試料を購入する予定であったが、NMR実験の結果から予定していた配列が必ずしも最適でなく、さらに検討を要すると判断したため、年度内の購入を見合わせた。次年度の前半には新たな配列のペプチド試料を購入する予定である。
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