本研究では、LAIR(leukocyte-associated immunoglobulin-like receptor)ファミリーが担うコラーゲン依存的な免疫抑制メカニズムの構造基盤の解明を目的とし、NMR/結晶構造解析/MDシミュレーションを統合的に活用して、LAIRの特異な動的構造が担うコラーゲン認識メカニズムと、免疫抑制シグナルの発信に重要なLAIR分子同士の相互作用の詳細解明に取り組んだ。 本年度は、これまでのNMRによる相互作用解析の結果に基づいた分子モデリングにより、LAIR分子が1個ないし2個結合することが予測される配列を有するコラーゲンモデルペプチドを新たに2種類準備した。ゲル濾過により予想通りの結合比であることが示唆されたため、改めてhLAIR-2コラーゲン結合ドメイン(LAIR2-CBD)と結合するコラーゲンモデル配列候補との共結晶化を試みた。しかし、残念ながら期間内に構造決定に適した結晶は得られなかった。LAIR2-CBDのNMR解析では、これまで未帰属であった部分の帰属を行い、コラーゲン結合時に構造変化を起こす部位を特定した。また、配向系試料を作成して、残余双極子カップリングの測定を行った結果、LAIR2-CBDの結晶構造に基づく予測値からのずれが明らかになり、溶液中での構造ゆらぎが大きいことが示された。今後は、複合体の配向系試料を用いてコラーゲン結合時のLAIR2-CBDの相対配向と分子間相互作用が解析できると期待される。MDシミュレーションでは、結晶構造に基づく複合体構造が得られなかったため、複合体モデルを用いてSteered MDによる解離シミュレーションの条件を検討し、解離における平均力ポテンシャルの計算をおこなった。
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