研究課題
薬理作用を示す医薬品原薬(有効成分)は、その結晶形あるいは結晶性により溶解度や溶解速度が異なるので、治療効果も異なる。したがって、製剤学的に医薬品原薬の結晶形の評価を行うことは極めて重要な課題となる。このため、原薬検出の特異性が高く、かつ製剤を非破壊的に評価できる新しい測定法の開発が望まれていた。そこでX線吸収端微細構造測定法(XAFS法)に着目し、医薬品原薬および製剤への適用が可能か評価した。Cl、S、Brの元素を含む医薬品原薬の結晶多形についてX線構造解析とXAFSスペクトル測定を行い、X線吸収原子が結晶内で形成している相互作用様式とXAFSスペクトル形状の比較を行ったところ、水素結合やハロゲン結合、ハロゲン-π相互作用など、比較的弱いと考えられてきた非共有結合性の相互作用が形成される場合であってもXAFSスペクトル形状の違いとして検出できることが初めて明らかとなった。これらの相互作用は、医薬品原薬結晶や医薬品製剤において一般に形成されるものであるが、これまで特異的に検出することは困難であった。また、XAFS法をBr含有医薬品であるブロムヘキシン塩酸塩の錠剤の評価にも適用し、錠剤がアルミとポリスチレンからなる包装中に存在している場合でも、結晶形を同定できることも明らかにした。以上より、XAFS法は原薬の結晶形評価としてのみならず、原薬分子が製剤中などで形成する分子間相互作用に関する元素特異的な知見が得られることが明らかとなり、新規測定法として医薬品原薬・製剤に対して幅広い応用が可能であると期待できる。
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