研究課題/領域番号 |
20K07004
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
山田 佳太 大阪大谷大学, 薬学部, 講師 (80584185)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 酸性糖鎖 / 硫酸化糖鎖 / リン酸化糖鎖 / グルクロン酸 / 膵臓がん / バイオマーカー / O-結合型糖鎖 / 血清 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は、血液中のマイナー酸性糖鎖群の中から膵臓がんの診断に有用なバイオマーカーを見出すことである。 初年度は、研究計画立案時に見出した膵臓がん患者血清でグルクロン酸化N-型糖鎖の発現量が低下するという現象の再現性を確認するため、複数の健常者血清と膵臓がん患者血清検体を解析した。グルクロン酸化糖鎖の減少率に差があるものの、膵臓がん患者血清ではグルクロン酸化糖鎖が減少傾向にあることを確認することができた。減少率が検体によって差が見られる点については、がんの発症状況や転移の有無、使用される薬剤の種類に起因する可能性があるため、引き続きグルクロン酸化N-型糖鎖の変動機構について解析を進める予定である。この成果は論文として発表した。 N-結合型糖鎖解析を進めると共に、研究費で購入した検出装置をセットアップし、マイナー酸性O-結合型糖鎖の分析法の検討を行った。先ず、微量なO-型糖鎖の検出を達成するためコアタンパク質からのO-型糖鎖の遊離法を最適化し、これまで使用した糖鎖遊離法と比べて10倍の遊離効率を有する手法を確立した。血清試料が有限であるため、培養がん細胞をモデル試料し、マイナー酸性O-結合型糖鎖の解析法手法の検討した。その結果、培養細胞中の硫酸化O-型糖鎖やリン酸化O-型糖鎖の検出に成功した。この成果を学会で報告している。 さらに、培養癌細胞を用いて検討したマイナー酸性O-型糖鎖解析法を血清試料に適用した。その結果、血清中のマイナー酸性O-型糖鎖の検出を達成した。さらにこれらの糖鎖は多くの健常者血清で観察されたため、常時血中に存在するものであると考えられた。さらに少数の膵臓がん患者血清中のマイナー酸性糖鎖を解析すると、観察される糖鎖構造は共通しているが、その発現量は異なっていた。この結果からマイナー酸性O-型糖鎖をバイオマーカーとして利用できる可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初の実験計画通り、マイナー酸性N-結合型糖鎖解析を達成し、論文公表に至っている。さらに、研究費によって購入した機器により糖鎖測定系を新たに構築し、効率的に研究を進める環境を構築した。このためN-型糖鎖解析を進める共に、マイナー酸性O-型糖鎖解析手法の検討を行うことができた。手法検討の結果、血清中のマイナー酸性O-型糖鎖の検出に成功した。さらに、バイオマーカー候補となりうるマイナー酸性O-型糖鎖も見出されているため、計画で想定される最も理想的な形で研究は進行している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、初年度で確立したマイナー酸性O-結合型糖鎖の解析手法を多検体に適用し、マーカー候補となる糖鎖を特定する。またグルクロン酸化N-型糖鎖のキャリアタンパク質を特定する。キャリアタンパク質を特定することができれば、発現量の変動機構を明らかにすることができると考えている。また、遊離型糖鎖や糖脂質糖鎖につてもマイナー酸性糖鎖が存在するのでそれらの解析手法の検討にも着手する。
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次年度使用額が生じた理由 |
申請書作成時の予算使用計画において初年度の研究費は、分析系のセットアップの機材購入と血清検体の購入を想定していた。本研究の進行計画においては、機材購入の優先順位が高いため、計画通り費用を使用した。一方、機材購入後の残額では購入できる血清検体の数が限られるため、本年度での研究費の使用を見送った。初年度の残額と次年度に配分される研究費を合わせることで、まとまった数の血清検体を購入したい。
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