研究課題/領域番号 |
20K07005
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研究機関 | 神戸学院大学 |
研究代表者 |
武田 真莉子 神戸学院大学, 薬学部, 教授 (70257096)
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研究分担者 |
亀井 敬泰 神戸学院大学, 薬学部, 講師 (40637451)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | IVIVC / 小腸吸収性予測 / バイオ医薬 / ヒト iPS細胞由来腸管上皮細胞 / 生体膜透過機構 / キャリア / 吸収促進剤 / バイオアベイラビリティ |
研究実績の概要 |
近年多様化を見せる新規医薬品モダリティを臨床で有効活用させるためには、薬物の体内動態を制御し、 治療効果の向上並びに副作用軽減を図る DDS の基盤技術が欠かせない。例えば消化管吸収促進 DDS は、一般に難吸収性であるバイオ医薬品の経口製剤化への寄与が期待される。一方、in vitro からの薬物吸収性予測手法が、新しいモダリティや高度化 DDS に適さなくなっているという課題が顕在化してきている。薬物の小腸吸収性の予測には、従来 Caco-2 細胞等が用いられており、主に受動拡散によって生体膜を透過する低分子については in vitro-in vivo correlation (IVIVC) が良好である。しかしながら当研究室で研究を進める細胞膜透過ペプチド:Cell- penetrating peptides (CPPs)においては、in vitro から in vivo への経口 バイオアベイラビリティ予測や、作用機序解明が困難な状況にあることが明らかとなっている。従って、小腸吸収性を高い精度で予測し、CPP の吸収促進メカニズムを解明するための新たな in vitro 評価系の構築が必要となる。 そこで本研究では、細胞機能がヒト生体小腸と類似したiPS細胞由来腸管上皮細胞を用いて、in vitro での CPP 吸収促進効果を検討し、評価系としての有用性を検証する。今年度は、トランズウェルを用いた薬物透過実験を iPS細胞由来腸管上皮細胞とCaco-2細胞とで比較検討し、その結果、細胞間隙透過性基質であるFD-4の膜透過係数はiPS細胞とCaco-2細胞で同程度である一方、インスリンおよびGLP-1はiPS細胞由来腸管上皮細胞とCaco-2細胞間で異なる透過挙動が認められた。このことから、2種の細胞間に異なる膜動輸送活性が存在することが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は、トランズウェルを用いた薬物透過実験を iPS細胞由来腸管上皮細胞とCaco-2細胞とで比較検討し、その結果、細胞間隙透過性基質であるFD-4の膜透過係数はiPS細胞とCaco-2細胞で同程度である一方、インスリンおよびGLP-1は iPS細胞とCaco-2細胞間で異なる透過挙動が認められた。具体的には、インスリンおよびGLP-1ともに、Caco2細胞よりもiPS細胞でのA→B透過量が多いという知見が得られている。また、透過の絶対量は両細胞インスリン>GLP-1であるが、特にiPS細胞においてその差が顕著であった。GLP-1よりも分子量の大きいインスリンがより大量に透過することから、iPS細胞にインスリンを効率よく透過させる機構が存在することが示唆され、このように新知見が多数得られたことから、概ね順調に進展していると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の検討の結果、iPS細胞由来腸管上皮細胞におけるインスリンの透過実験においては、他の細胞種やバイオ薬物とは異なる透過機構が存在することが考えられるが、現状そのメカニズムは不明である。今後は、この点を明らかにするとともに、 iPS細胞にバイオ医薬と当研究室が開発している透過促進剤CPPsを同時添加し、in vivoで見られた膜透過促進効果が再現されるかを検証する。また、共焦点顕微鏡を用いて、バイオ医薬の細胞内在化の挙動を評価する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
予定していた試薬が新型コロナ感染症の関係で入手が遅れたため、当該年度に購入できませんでした。次年度に、購入を予定しています。
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