研究課題/領域番号 |
20K07008
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研究機関 | 崇城大学 |
研究代表者 |
大栗 誉敏 崇城大学, 薬学部, 教授 (70346807)
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研究分担者 |
安楽 誠 崇城大学, 薬学部, 教授 (60398245)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 抗体フラグメント / Fv / Pichia pastoris / 抗体医薬品 / 耐熱化 |
研究実績の概要 |
これまで抗体医薬品アダリムマブのFab領域を酵母より大量発現させることに成功している。アダリムマブは炎症性サイトカインのTNFαに対する中和作用であるためADCC活性に必要なFc領域は不要であり、小型の抗体フラグメントとしても機能できる。一方で、植物由来のホモ二量体であるphlp7の極めて安定化した変異体(M5C)の作製に成功している。この変異体は野生型が60℃から徐々に変性して85℃で完全に変性する条件において、二次構造がほとんど壊れない超耐熱型蛋白質であった。さらに野生型とM5C変異体をそれぞれマウスに投与し、投与した抗原に対する抗体産生を野生型と比較したところM5C変異体は著しく抗体産生が抑えられた。一般にバイオ医薬品は熱に弱く、製造過程や保存時に起こりうる蛋白質の変性・凝集は問題となっている。その為、より安定な構造をもつ分子はバイオ医薬として有用である。特に小型抗体のscFvは安定性の低さが課題ともなっている。そこで本研究では、超耐熱性のM5C変異体を抗体医薬由来Fvドメインと融合させ、超耐熱型の抗体フラグメントを作製する。さらに動物実験により抗原性、体内動態への影響を調べる。もし分子全体の抗原性が抑えられれば、『抗原の安定化は抗原性を抑制する』という理論の証明となる。改変蛋白質の構造安定性と抗原性に着目した報告は少なく、学術的にも極めて独創的な研究であるといえる。また超耐熱型蛋白質融合Fvフラグメントが新たな抗体医薬のドラッグベースとしての応用ができ、大きな波及効果が期待できる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2020年度は、遺伝子操作による超耐熱型蛋白融合Fvフラグメントの発現系の構築を行った。各Fv領域の遺伝子と目的のPhlp7変異体遺伝子をPCRにより接合・増幅させた。両遺伝子間にはリンカー(GS)を設計した。Fabの共発現の手法に従って、VH+phlp7変異体とVL+phlp7変異体の共発現ベクター(pPICzα)を作製した。酵母Pichia pastoris(X33株)へ遺伝子挿入し、大量培養を行った。培地上清のSDS-PAGEより目的のタンパク質の発現が確認された。精製系を検討した結果、3段階の精製によりFv+phlp7変異体の融合タンパク質を単離精製することに成功した。またバイオレイヤー干渉法による相互作用解析によって抗原のTNFαへの結合活性を有することを明らかにした。
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今後の研究の推進方策 |
酵母Pichia pastorisを用いて、共発現によるFv+phlp7変異体融合タンパク質の発現系構築に成功した。しかしながらFL鎖のホモダイマーの産生も多く見られ、収率に影響した。そこで次年度はFv領域及びphlp7部位へのチャージ相互作用を狙ったアミノ酸変異を導入しホモダイマー形成の抑制を検討する。遺伝子間のリンカーをGGGSとし、リンカーの影響も検討していく。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナウイルス感染症の影響で学会参加による情報収集が出来ず、旅費が未使用となったため。
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