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2022 年度 実施状況報告書

環境常在性の病原性真菌であるトリコスポロンの感染機構の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K07022
研究機関明治薬科大学

研究代表者

松本 靖彦  明治薬科大学, 薬学部, 准教授 (60508141)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2024-03-31
キーワード真菌 / 感染 / 遺伝子欠損株 / カイコ
研究実績の概要

トリコスポロン・アサヒは、好中球が減少した患者に対しては重篤な深在性真菌症を引き起こす臨床上問題となっている病原真菌である。しかし、これまでにトリコスポロン・アサヒの病原性を評価するための感染動物モデルがなく、またトリコスポロン・アサヒの遺伝子組換え技術が確立されていなかった。
本研究の目的は、環境常在性の病原真菌であるトリコスポロンの感染機構を分子生物学的に解明するための基盤技術の構築である。
令和2年度では、簡便にトリコスポロン・アサヒの病原性を評価するためのカイコ感染モデルの確立に成功した。また、アグロバクテリウムを用いた遺伝子導入法によりトリコスポロン・アサヒにGFPを発現させることに成功した。
令和3年度では、トリコスポロン・アサヒの遺伝子欠損株を作製するための方法を確立した。令和2年度に確立したアグロバクテリウムを用いた遺伝子導入法を用いて、非相同組換え修復に関与するKu70タンパク質をコードするku70遺伝子の欠損株を樹立した。このku70遺伝子欠損株は、野生株より標的とする遺伝子領域に対する相同組換え効率が上昇していた。これは、Ku70タンパク質を介した非相同末端連結による非特異な遺伝子挿入が起こらなくなり、標的とする遺伝子領域で相同組換えが起きる頻度が上昇したことによると考えている。
令和4年度では、ku70遺伝子欠損株を親株として用い、エレクトロポレーション法とJoint PCR法を組合わせた方法で、大腸菌での遺伝子クローニングを行うことなくトリコスポロン・アサヒの遺伝子欠損株を樹立する方法を開発した。
これらの結果から、カイコ感染モデルを用いたトリコスポロン・アサヒの病原性の評価系、およびku70遺伝子欠損株を親株とした迅速簡便な標的遺伝子の欠損株を樹立する技術が構築できたと考えられる。トリコスポロン属真菌での遺伝子欠損株の樹立は本研究が初めてである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

当初の計画の通り、令和3年度までにトリコスポロン・アサヒのカイコ感染モデルの確立とアグロバクテリウムを用いたトリコスポロン・アサヒの遺伝子欠損株を作製することに成功しており、令和4年度ではアグロバクテリウムを用いた方法より簡便なエレクトロポレーション法によるトリコスポロン・アサヒの遺伝子欠損株の樹立に成功した。これらの結果は、トリコスポロン・アサヒの感染症の研究に重要になる簡便な感染モデルの確立という目的とトリコスポロン・アサヒの迅速簡便な遺伝子欠損株の樹立という目的が達成されており、研究が順調に進展していることを示している。

今後の研究の推進方策

今後は、これまでに確立したトリコスポロン・アサヒの遺伝子欠損株を作製する方法を用いて、トリコスポロン・ア
サヒの病原性に関わる遺伝子を同定する。まずはトリコスポロン・アサヒと同じ担子菌門に属する病原真菌であるクリプトコッカス ・ネオフォルマンスの病原性に関与することが知られている遺伝子のトリコスポロン・アサヒにおける相同遺伝子の欠
損株を樹立して、カイコに対する病原性に関わるか検証する。特に、カルシニューリン経路やGpa経路はトリコスポロン・アサヒにも保存されていることがゲノム解析から明らかになったので、これらのシグナル伝達経路がトリコスポロン・アサヒの病原性に関与するか明らかにする。すでにカルシニューリンのβサブユニットをコードするcnb1遺伝子欠損株の樹立に成功している。さらに、その他のカスケードに関わる遺伝子欠損株も樹立し、最もカイコ感染モデルで病原性に寄与するシグナル伝達経路を特定する。

次年度使用額が生じた理由

研究論文を投稿するための費用を次年度使用額として計上した。

  • 研究成果

    (19件)

すべて 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (14件) (うち国際学会 1件、 招待講演 2件) 図書 (1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] A joint PCR-based gene-targeting method using electroporation in the pathogenic fungus Trichosporon asahii2022

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto Yasuhiko、Nagamachi Tae、Yoshikawa Asami、Yamada Tsuyoshi、Sugita Takashi
    • 雑誌名

      AMB Express

      巻: 12 ページ: 91

    • DOI

      10.1186/s13568-022-01431-9

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] A critical role of calcineurin in stress responses, hyphal formation, and virulence of the pathogenic fungus Trichosporon asahii2022

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto Yasuhiko、Yoshikawa Asami、Nagamachi Tae、Sugiyama Yu、Yamada Tsuyoshi、Sugita Takashi
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 12 ページ: 16126

    • DOI

      10.1038/s41598-022-20507-x

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 病原真菌Trichosporon asahiiの病原性における カルシニューリン経路の役割2023

    • 著者名/発表者名
      松本靖彦、吉川麻美、長町多恵、杉山悠、山田剛、杉田隆
    • 学会等名
      第96回日本細菌学会総会(姫路)
  • [学会発表] 病原真菌Trichosporon asahiiの感染機構の解明に向けた遺伝学的基盤技術の構築2023

    • 著者名/発表者名
      松本靖彦、山田剛、杉田隆
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会(札幌)
    • 招待講演
  • [学会発表] 病原真菌Trichosporon asahii のストレス応答や病原性におけるMAPキナーゼHog1による制御2023

    • 著者名/発表者名
      杉山悠、松本靖彦、長町多恵、吉川麻美、杉田隆
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会(札幌)
  • [学会発表] GTP結合タンパク質Gpa1は、病原真菌Trichosporon asahiiのバイオフィルム形成に寄与する2023

    • 著者名/発表者名
      小金澤彩智、松本靖彦、金井弘美、杉田隆
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会(札幌)
  • [学会発表] 病原真菌Trichosporon asahiiの増殖におけるPlc1シグナル伝達経路機構の関与2023

    • 著者名/発表者名
      金井弘美、松本靖彦、小金澤彩智、杉田隆
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会(札幌)
  • [学会発表] 病原真菌Trichosporon asahiiのストレス抵抗性における転写因子Crz1の役割2023

    • 著者名/発表者名
      清水 優太、松本 靖彦、吉友 桂、遠藤 寿伶希、杉田 隆
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会(札幌)
  • [学会発表] 病原真菌Trichosporon asahiiの窒素飢餓条件の生育におけるオートファジー関連遺伝子atg1の役割2023

    • 著者名/発表者名
      中山 メイ、松本 靖彦、米本 歩未、宮本 和夢、倉門 早苗、杉田 隆
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会(札幌)
  • [学会発表] 病原真菌Trichospocon asahiiの細胞膜や細胞壁の維持におけるMAPキナーゼMpk1の必要性2023

    • 著者名/発表者名
      吉友桂、松本靖彦、遠藤寿伶希、清水優太、杉田隆
    • 学会等名
      日本薬学会第143年会(札幌)
  • [学会発表] 病原真菌Trichosporon asahiiにおけるku70遺伝子の欠損による遺伝子欠損株の作製効率の上昇2022

    • 著者名/発表者名
      松本靖彦、長町多恵、吉川麻美、山田剛、杉田 隆
    • 学会等名
      第41回関東医真菌懇話会(東京 [Web])
  • [学会発表] A novel silkworm infection model for elucidating the virulence of the fungal pathogen Trichosporon asahii2022

    • 著者名/発表者名
      Matsumoto Y, Yamada T., and Sugita T
    • 学会等名
      International Union of Microbiological Societies 2022, (Rotterdam [WEB])
    • 国際学会
  • [学会発表] 病原真菌Trichosporon asahiiにおける迅速な遺伝子組換え技術の開発2022

    • 著者名/発表者名
      松本靖彦、長町多恵、吉川麻美、山田剛、杉田 隆
    • 学会等名
      第34回微生物シンポジウム(東京)
  • [学会発表] 病原真菌Trichosporon asahiiにおけるHog1を介したストレス応答や病原性の制御2022

    • 著者名/発表者名
      杉山悠、松本靖彦、吉川麻美、長町多恵、杉田 隆
    • 学会等名
      第66回日本医真菌学会総会・学術集会(岐阜)
  • [学会発表] 病原真菌Trichosporon asahiiの病原性におけるカルシニューリンの役割2022

    • 著者名/発表者名
      松本靖彦、吉川麻美、長町多恵、山田 剛、杉田 隆
    • 学会等名
      第66回日本医真菌学会総会・学術集会(岐阜)
  • [学会発表] 病原真菌Trichosporon asahiiの感染機構の理解のための遺伝学的手法の開発2022

    • 著者名/発表者名
      松本靖彦、山田剛、杉田 隆
    • 学会等名
      第95回日本生化学会(名古屋)
    • 招待講演
  • [図書] バイオプロセスを用いた有用性物質生産技術2022

    • 著者名/発表者名
      執筆者:73名、技術情報協会
    • 総ページ数
      553
    • 出版者
      技術情報協会
    • ISBN
      978-4-86104-904-0
  • [備考] Researchmap

    • URL

      https://researchmap.jp/Matsumon1980

  • [備考] 明治薬科大学微生物学研究室

    • URL

      https://u-lab.my-pharm.ac.jp/~biseibutsu/

URL: 

公開日: 2023-12-25  

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