研究課題
肥満は、糖尿病や高血圧症をはじめとする様々な生活習慣病の発症原因とされ、その予防や解消は重要な課題である。肥満の制御は精力的に解析されているものの、その制御は複雑で、脂肪組織における肥満の明確な制御機構は解明されていない。我々は、脂質メディエーターであるプロスタグランジン(PG)やロイコトリエン(LT)などのエイコサノイドに注目し、脂肪細胞の分化制御における役割とその制御機構の解明を進めてきた。本研究では、細胞および遺伝子改変動物を用いて、肥満制御におけるエイコサノイドの生理的意義とその制御機構の解明を目的として行った。マウス脂肪細胞3T3-L1細胞を分化誘導し、エイコサノイドの産生量の変化をLC-MS/MSにより解析し、産生量が変化したエイコサノイド類について脂肪細胞の分化制御における役割の解析を行った。脂肪細胞の分化過程で産生量が増加したLTC4とプロスタサイクリンによる脂肪細胞の分化制御について解析を行った。その結果、LTC4は脂肪細胞分化のマスター因子であるPPARγにより転写レベルでの制御を受け、脂肪細胞の分化の進展とともに産生量が上昇した。さらに、LTC4はCysLT1受容体を介して脂肪細胞の分化を促進することも分かった。一方、プロスタサイクリンは脂肪細胞の未分化から分化初期に一過的に産生され、プロスタサイクリンを産生する合成酵素の遺伝子発現は、転写因子であるKLF9により活性化されることが分かった。さらに、アラキドン酸の代謝物であるHETEsによる脂肪細胞の分化への影響についても調べ、新たに20-HETEが脂肪細胞の分化を促進することを見出した。
すべて 2023
すべて 雑誌論文 (1件) (うち国際共著 1件、 査読あり 1件、 オープンアクセス 1件)
eLife
巻: 12 ページ: e77441
10.7554/eLife.77441