分泌因子neudesinは様々な組織で発現するが、免疫細胞である樹状細胞やマクロファージでも発現することが分かっている。これまでに、野生型(WT)とneudesinノックアウト(KO)マウスにB16メラノーマ細胞を移植すると、KOマウスではWTと比較して細胞性免疫が亢進し、腫瘍の成長が抑制されることを認めた。そこで本研究は、neudesinの腫瘍免疫抑制メカニズムについて検討した。 KOマウスにおける腫瘍成長抑制は、抗CD8抗体を用いたCD8陽性T細胞除去と、クロドロン酸リポソームを用いたDC・マクロファージ除去により、著しく損なわれたため、これらの細胞が重要な役割を果たすことが示唆された。また、培養細胞への組換えneudesin添加実験により、neudesinはCD8陽性T細胞ではなく、DCに作用し、その機能を抑制することが示唆された。さらに腫瘍微小環境では、DCのneudesin発現が増加することがわかった。近年、DCの活性化には酸化的リン酸化から解糖系への代謝転換が重要であることが報告されたため、neudesinのDC機能抑制における解糖系の関与について検討した。WTとKOマウス骨髄由来DCのLPS刺激によるグルコース消費、乳酸産生量、解糖系関連遺伝子Glut1、Ldhaの増加は、WTと比較してKOで有意に増加したが、組換えneudesinの添加によりKOでの増加が抑制された。サイトカインIl12a、Tnfa、Ifnb、共刺激分子Cd86についても同様の結果が得られた。また解糖系阻害剤2-DGを添加すると、KOで認められたLPSによるサイトカインと共刺激分子発現の増加が失われた。以上より、neudesinはDC自身に作用し、解糖系の抑制を介してDC機能を調節し、CD8陽性T細胞による腫瘍排除を低下させ、免疫回避を誘導する可能性が示唆された。
|