研究課題/領域番号 |
20K07030
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
古田 和幸 岡山大学, 医歯薬学域, 准教授 (50644936)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 樹状細胞 / 抗原提示 / 小胞輸送 / MHC-II |
研究実績の概要 |
樹状細胞は生体に侵入した病原細菌や腫瘍由来成分などの外来抗原を取り込み、主要組織適合抗原(MHC)分子を介して外来抗原由来ペプチドを T細胞に提示することで病原細菌や腫瘍に対する免疫応答を誘導する。この抗原提示においては、MHC-I、MHC-IIの発現と共に、活性化因子であるCD80, CD86などの共刺激分子、また抑制因子であるPD-L1、PD-L2などの共抑制分子の細胞表面発現がT細胞の活性化を調節する。樹状細胞の周辺環境の因子はこれらのタンパク質の細胞表面発現の変化を誘導することで樹状細胞による抗原提示機能を変化させると考えられている。 樹状細胞は抗腫瘍免疫応答の誘導においては腫瘍由来抗原ペプチドを提示することで腫瘍に対する免疫応答が開始されるが、腫瘍細胞や腫瘍周辺細胞の産生する因子は樹状細胞の抗原提示機能に対して抑制的に作用することが知られている。腫瘍などの疾患状態においては、免疫細胞に小胞体ストレスが誘導され、免疫機能に抑制的に作用することも報告されているが、この抑制機構についてはどのような因子がどのように機能するかは明らかではない。そこで、本研究では、腫瘍周辺環境に由来する因子などの樹状細胞の周辺環境からの刺激対する抗原提示関連分子の発現制御機構の解明を目的として解析を行い、今年度は以下の結果を得た。 1) 腫瘍の培養上清は樹状細胞表面の接着分子の発現を変化させることを見いだした。 2) 小胞体ストレス誘導刺激によって樹状細胞表面の抗原提示分子の発現が抑制されることを見いだした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度計画した研究項目は、抗原提示分子の発現を制御するシグナル伝達の解析について、一部の実験が予定よりやや遅れている。一方で、腫瘍環境で誘導される小胞体ストレスによる樹状細胞への作用を見出したため、その解析を優先して実施した。そのため、全体としては順調に進展していると判断している。
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今後の研究の推進方策 |
研究計画に基づき研究を進める予定である。前年度の解析によって、樹状細胞の抗原提示に関与する分子の発現変化を誘導する因子を見出したので、それらの作用機序の解析を優先して進める。また、これらの因子による抗原提示分子の発現変化における、細胞内小胞輸送の制御因子であるRabファミリーによる制御について解析を行う。さらに、抗原提示の調節因子である共刺激分子、共抑制分子の発現制御についても解析を進める。これらの解析によって、腫瘍由来因子の樹状細胞への抑制作用の分子実態の解明を目指す。
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度は、実験計画について、実施を計画していたシグナル伝達に関する実験について計画がやや遅れ未使用の予算が生じた。これらの計画は次年度に実施するため、研究費の一部が次年度使用となった。 次年度は、今年度実施予定であった実験を優先して実施する計画である。研究費はこれらの研究を遂行する上で必要な消耗品を中心に研究計画に沿って使用する。
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