研究実績の概要 |
可溶性エポキシド加水分解酵素(sEH)はエポキシド加水分解活性と脱リン酸化活性の二つの活性を持つ酵素である。昨年度までにおいて、エポキシド加水分解活性により生成するDHAジオール体が脳の神経保護効果を持つことを明らかにした。本年度は、母体のDHA摂取により、DHAジオール体(19,20-DHDP)が胎児の脳へと移行し、メチル水銀による神経毒性を軽減できることを明らかにした。19,20-DHDPは、母乳や臍帯血に含まれることを見出したことから、母体から胎児や乳児へと移行すると考えられる。また19,20-DHDPは抗酸化因子の誘導を介して胎児脳の神経保護作用を示すことを明らかにした。一方で、sEHの脱リン酸化活性の欠損マウスを用いて機能解析を行った。脱リン酸化活性の欠損により、脳内のリゾホスファチジン酸(LPA)の脱リン酸化が低下する結果が得られたことから、脳内でsEHの脱リン酸化活性がLPA代謝に関わることが示された。またこのマウスはWTマウスと比較して、行動異常を示したことから、LPA代謝を介した脳機能の制御にsEHが関与する可能性が示された。
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