研究課題/領域番号 |
20K07032
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研究機関 | 長崎大学 |
研究代表者 |
武田 弘資 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 教授 (10313230)
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研究分担者 |
谷村 進 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(薬学系), 准教授 (90343342)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ミトコンドリア / ストレス応答 / タンパク質リン酸化 / シグナル伝達 |
研究実績の概要 |
細胞傷害性ストレスにさらされた細胞では、ミトコンドリアはATP産生によって細胞の生存を支える通常の機能を失い、逆に細胞死へのシグナルを積極的に発信する。よって、ミトコンドリアの機能低下の程度を的確に感知し、それに見合った適切な情報をミトコンドリア内外の分子や他のオルガネラに伝える必要がある。我々は、その機構を担う分子としてPGAM5に着目して研究を進めている。前年度までに我々は、ユビキチンリガーゼParkin を発現した HeLa 細胞に脱共役剤を処理してマイトファジーを誘導すると、その初期に起こるミトコンドリアの外膜破壊に伴って切断型 PGAM5 がミトコンドリアから放出されることを見出している。そこでPGAM5がマイトファジーの進行に与える影響について検討した。野生型細胞およびPGAM5 KO細胞でのマイトファジーの進行状況をいくつかのミトコンドリア局在分子の発現量を指標に検討したところ、KO細胞ではマイトファジーが亢進していることが明らかとなった。その際、リソソームの活性を抑制するBafilomycin A1を加えると、KO細胞におけるマイトファジーの亢進がキャンセルされたことより、KO細胞ではリソソームの活性が亢進していることが示唆された。実際、LysoTrackerでリソソーム活性を評価したところ、野生型細胞ではマイトファジー誘導8時間後までリソソーム活性が上昇し、その後は減少に転じるのに対し、KO細胞では誘導8時間後以降の減少は認められず、12時間後にかけてさらに活性が上昇した。この結果より、マイトファジーの過程でミトコンドリアから放出されたPGAM5は、リソソームの活性を抑制することでマイトファジーをネガティブフィードバック的に制御し、ミトコンドリアストレスに対する細胞応答を制御していることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究では、①ミトコンドリアのストレス感知機構、②タンパク質リン酸化によるシグナル伝達機構、③細胞の新たなストレス応答機構に解析項目を分けて研究を遂行している。①ではPGAM5分子自体がストレスに対してどのように応答するか、②ではミトコンドリア内外の分子にPGAM5がどのように働きかけるか、③では②で見出す標的分子に対しての働きかけにより、どのような細胞応答が導き出されるかをそれぞれ明らかにしたいと考えている。今年度は項目③を重点的に進めた結果、マイトファジーの過程でミトコンドリアから放出されたPGAM5がリソソームの活性を抑制することでマイトファジーをネガティブフィードバック的に制御することが明らかとなり、それがミトコンドリアストレスに対する細胞応答の制御におけるPGAM5の役割の一つであることが示唆された。項目①についてはPGAM5の切断および多量体化の意義を探るため、多量体化に異常のあるいくつかのPGAM5点変異体を作製し、それぞれの細胞内での挙動や酵素活性の検討を進めている。項目②についてはPGAM5の結合分子で脱リン酸化基質となる可能性のある分子の解析を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
当初の予定通り研究を進める。とくに、マイトファジー誘導時にミトコンドリアから放出された切断型PGAM5がリソソームの機能を抑制する分子機構を詳細に解析する予定である。また、「弱い」ミトコンドリアストレスに対する応答におけるPGAM5の役割を探ることにも注力し、定常状態のミトコンドリア動態に対する影響や脂質代謝への作用などを重点的に解析していく予定である。
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