乳がん患者の血中及び組織中において検出される高濃度の女性ホルモン17β-エストラジールは抗がん剤の奏効率や耐性化等に影響を及ぼすことが推測されているが、詳細は未だ不明である。そこで、新たに17β-エストラジール存在下にシスプラチン (CDDP) を継続的処理することにより乳がんMCF7細胞のCDDP/E耐性株を調製し、過去に樹立したCDDP耐性株と抗がん剤感受性を比較したところ、CDDP耐性株に比してCDDP/E耐性株のCDDP感受性は有意に低かった。CDDP/E耐性株のアルドケト還元酵素 (AKR) 1C3発現量は、他の抗がん剤 (タモキシフェンとパクリタキセル、CDDP) 耐性株より高かった。また、CDDP/E耐性化は細胞増殖に関わる情報伝達分子MAPキナーゼや生存に関わるAktの活性化を誘起した。さらに、AKR1C3阻害剤とMAPキナーゼやAktの阻害剤の併用はCDDP/E耐性化を著明に克服させたことから、これら阻害剤の併用は乳がん細胞のCDDP耐性化抑制する有効な補助化学療法となりうることが推察された。
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