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2020 年度 実施状況報告書

エリスロポエチン受容体結合分子を介した慢性骨髄増殖性腫瘍の発症機序の解明

研究課題

研究課題/領域番号 20K07035
研究機関慶應義塾大学

研究代表者

多胡 めぐみ  慶應義塾大学, 薬学部(芝共立), 教授 (30445192)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワード慢性骨髄増殖性腫瘍 (MPN) / JAK2V617F変異体 / エリスロポエチン受容体 (EpoR) / Rras2 / Pim1 / Pim2
研究実績の概要

慢性骨髄増殖性腫瘍 (MPN) の原因遺伝子として、チロシンキナーゼJAK2変異体 (V617F) が同定されているが、JAK2の変異がMPNの発症へと至る分子機構には不明な点が多い。これまでに、JAK2阻害剤ruxolitinibが開発され、MPNの治療に適用されているが、治療効果の低さが問題となっている。したがって、より効果的なMPNの治療薬の開発が望まれており、JAK2V617F変異体が誘導する発がんシグナルの全貌を解明し、新たな治療標的分子を同定することが重要である。
私達は、JAK2V617F変異体は、エリスロポエチン受容体 (EpoR) の3個のチロシン残基(Y343, Y460, Y464) のリン酸化を介して、細胞増殖や腫瘍形成を誘導することを見出している。そこで今年度は、JAK2V617F変異体が示す形質転換能に必須であるEpoRのリン酸化部位を介して結合する分子および発現が誘導される遺伝子を同定し、MPNの発症機序の解明をめざした。その結果、EpoRの結合分子として、Ras関連低分子量GTPaseであるRras2を同定し、JAK2V617F変異体により、EpoRのリン酸化を介して、セリン・スレオニンキナーゼPim1、Pim2の発現が誘導されることを見出した。JAK2V617F変異体とEpoRを強制発現したBa/F3細胞において、shRNAを用いて、Rras2、Pim1、Pim2の発現を抑制し、これらの分子がJAK2V617F変異体による細胞増殖に及ぼす影響を検討した。Rras2やPim2の発現抑制は、細胞増殖をわずかに抑制しただけであったが、Pim1の発現抑制は顕著に細胞増殖を抑制した。以上の結果より、JAK2V617F変異体が示す形質転換能において、Pim1が重要な役割を果たすことが示唆された。現在、Pim1を介した発がん誘導機構の解析を進めている。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

コロナ禍での大学閉鎖により、研究実行が不可能な時期が生じ、研究計画はやや遅れている。

今後の研究の推進方策

JAK2V617F変異体が示す形質転換能において重要な役割を果たすPim1に着目し、MPNにおけるPim1を介した発がん制御機構の解明をめざす。JAK2V617F変異体の下流で活性化されるシグナル経路(STAT5、MEK-ERK、PI3K-Akt)の活性に及ぼすPim1の役割をイムノブロット法やin vitro キナーゼアッセイにより検討する。
また、JAK2V617F変異体の下流では、EpoRのリン酸化を介して、Pim1と同様に、Pim2の発現も誘導された。Pim1、Pim2はいずれも、アポトーシス促進タンパク質であるBADを基質とし、リン酸化されたBADはアポトーシス促進機能を失うことが知られている。しかしながら、Pim1、Pim2のノックダウンがJAK2V617F変異体発現細胞の増殖に及ぼす影響が大きく異なったことから、Pim1とPim2は異なる機能を有する可能性が示唆された。そこで、定量的リン酸化プロテオーム解析を行い、JAK2V617F変異体発現細胞において、Pim1、Pim2の下流でリン酸化されるタンパク質を網羅的に解析し、Pim1、Pim2を介した細胞内シグナル伝達経路を明らかにすることをめざす。
JAK2V617F変異体発現細胞において、Y343、Y460、Y464のリン酸化に依存してEpoRに結合する分子として、R-Ras2以外に、低分子量GTPase Rhoファミリーのグアニンヌクレオチド交換因子であるDock8を同定している。今後は、JAK2V617F変異体による細胞増殖や腫瘍形成に及ぼすDock8の機能を解析することをめざす。さらに、JAK2V617F変異体発現細胞におけるDock8を介した細胞内シグナル伝達経路を解析し、MPNにおけるDock8の発がんシグナルを解明することをめざす。

次年度使用額が生じた理由

コロナ禍により大学閉鎖があり、予定した実験の遂行が困難であったため、残額が生じた。翌年度分として請求した助成金を使用し、来年度に、今年度予定していた動物実験、細胞内シグナル伝達経路の解析を行う予定である。

  • 研究成果

    (6件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (4件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 4件) 学会発表 (2件)

  • [雑誌論文] EBP2, a novel NPM-ALK-interacting protein in the nucleolus, contributes to the proliferation of ALCL cells by regulating tumor suppressor p53.2021

    • 著者名/発表者名
      Uchihara Y, Tago K, Tamura H, Funakoshi-Tago M
    • 雑誌名

      Mol Oncol.

      巻: 15(1) ページ: 167-194

    • DOI

      10.1002/1878-0261.12822

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Coffee decoction enhances tamoxifen proapoptotic activity on MCF-7 cells.2020

    • 著者名/発表者名
      Funakoshi-Tago M, Tago K, Li C, Hokimoto S, Tamura H.
    • 雑誌名

      Sci Rep.

      巻: 10(1) ページ: 19588

    • DOI

      10.1038/s41598-020-76445-z.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Kampo medicines, Rokumigan, Hachimijiogan, and Goshajinkigan, significantly inhibit glucagon-induced CREB activation.2020

    • 著者名/発表者名
      Funakoshi-Tago M, Yu S, Kushida A, Takeuchi K, Tamura H.
    • 雑誌名

      Heliyon.

      巻: 6(3) ページ: e03598

    • DOI

      10.1016/j.heliyon.2020.e03598.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Pyrocatechol, a component of coffee, suppresses LPS-induced inflammatory responses by inhibiting NF-κB and activating Nrf2.2020

    • 著者名/発表者名
      Funakoshi-Tago M, Nonaka Y, Tago K, Takeda M, Ishihara Y, Sakai A, Matsutaka M, Kobata K, Tamura H.
    • 雑誌名

      Sci Rep.

      巻: 10(1) ページ: 2584

    • DOI

      10.1038/s41598-020-59380-x.

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] JAK2V617F変異体による腫瘍形成に及ぼすDDX5の役割2021

    • 著者名/発表者名
      武田 健吾、仲本 眞子、多胡 憲治、上田 史仁、多胡 めぐみ
    • 学会等名
      日本薬学会第141年会
  • [学会発表] NPM-ALK発現ALCLにおけるメトトレキサートによるアポトーシス誘導機構2021

    • 著者名/発表者名
      芳谷 郁実、初田 航一、内原 脩貴、多胡 憲治、多胡 めぐみ
    • 学会等名
      日本薬学会第141年会

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公開日: 2021-12-27  

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