AusDは一部のがん細胞株において、シトクロムP450(CYP)モノオキシゲナーゼ依存的にDNA損傷と増殖阻害を引き起こす天然化合物である。この化合物に高い感受性を示す細胞では、CYP2J2発現量が多い傾向にあることが報告されているが、CYP2J2がこの化合物の細胞毒性に必要かどうかは明らかになっていない。本研究ではがん細胞のAusD高感受性にCYP2J2が実際に関与するかどうかを明らかにすることを目的とした。 研究期間中に行った研究により、保有する骨肉腫細胞株群にもAusD高感受性とCYP2J2発現レベルの高さに正の相関があることが確認された。また、CYP2J2のノックダウンと過剰発現が、それぞれAusD感受性やDNA損傷誘導の緩和と亢進をもたらすことを明らかにした。酵素活性を持たないCYP2J2の過剰発現は、AusD感受性の亢進を引き起こさなかった。AusDの細胞毒性に関与する遺伝子のスクリーニングを行ったところ、CYPを活性化する遺伝子が複数同定された。以上の結果から、AusDの細胞毒性にはCYP2J2とその酵素活性が必要であることが明らかになった。CYP2J2によるAusDの代謝が細胞傷害性を付与すると考えられる。 AusDは細胞傷害性のあるプロドラッグとして、またCYP2J2発現量の高さはこの化合物が効果を発揮する細胞のバイオマーカーとして利用できる可能性があり、学術的のみならず医学的・薬学的にも意義深いものになることが期待される。
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