研究課題
希少脳腫瘍である上衣腫は、化学療法に耐性で外科手術による完全な切除も困難であることから、アカデミア主導でその発症機構を理解し、新たな治療標的を探索することが求められている。大脳に形成される2/3以上の上衣腫では、染色体転座によって機能未知ZFTAとNF-κB経路のエフェクター転写因子RELAが、融合タンパクZFTA-RELAとして発現していることが報告された。NF-κB経路は、炎症性サイトカインなどによって活性化され、細胞のがん化とがん細胞増殖を促進する。NF-κB経路が不活性な状態では、RELAは抑制性相互作用因子IκBと複合体を形成して細胞質中に局在するが、炎症性サイトカイン等の刺激によりIκBが分解されると核内へ移行し下流遺伝子の発現を活性化させる。したがって、RELAの核内移行はNF-κB経路の活性化の鍵となるステップである。融合タンパク質ZFTA- RELAは、サイトカイン刺激非依存的に核へ移行して下流遺伝子の発現を上昇させることから、この恒常的な核移行によるNF-κB経路の活性化が上衣腫形成の原因であると考えられている。しかし、ZFTA-RELAの恒常的核局在や発現制御の詳細な分子機構は明らかになっていない。また、ZFTA-RELAの発現によるNF-κB経路の恒常的活性化を抑制する戦略は上衣腫の治療法開発につながることが期待されるが、未だその創薬標的は探索されていない。本研究課題では、1) Zfta遺伝子破壊マウスの表現型解析によるZFTA-RELA機能阻害による上衣腫治療法の妥当性の検討、2) ZFTA-RELAの発現及び核移行機構解明による上衣腫治療標的の探索、3) 化合物探索による上衣腫治療法の開発を行なった。
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薬学研究の進歩
巻: 39 ページ: 17-28