研究課題/領域番号 |
20K07041
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研究機関 | 大阪大谷大学 |
研究代表者 |
竹橋 正則 大阪大谷大学, 薬学部, 准教授 (10378862)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | ポリ(ADP-リボシル)化 / PARP / 多能性幹細胞 / PARP阻害剤 |
研究実績の概要 |
ポリ(ADP-リボース)ポリメラーゼ(PARP)は、細胞内でDNA一本鎖切断が生じると活性化され、この酵素が触媒するポリ(ADP-リボシル)化が亢進し、DNA修復のために働くことが知られている。本研究の目的は、通常の培養状態でポリ(ADP-リボシル)化が亢進状態であることを見出した、マウスのES細胞、iPS細胞、mGS細胞(精子幹細胞由来の多能性幹細胞)といった由来の異なる多能性幹細胞を用いて、この自己複製能や分化能にPARPによるポリ(ADP-リボシル)化がどのような役割を担っているかを明らかにすることである。 まず、PARP阻害剤としてPJ34と抗がん剤として臨床使用されているOlaparibのマウスES細胞への影響を調べた。これらの阻害剤がマウスES細胞の増殖を抑制し、細胞死を誘導することを明らかにした。種々の遺伝子発現解析により、この影響はp53の活性化に起因するものと推測された。これらの結果は、これまで我々が明らかにした、種々の組織幹細胞に対するPARP阻害剤の影響と類似していた。 今回用いたPARP阻害剤はPARP1およびPARP2に対して阻害効果がある。このp53の活性化には、どちらの阻害による影響が強いかを確かめるため、shRNA発現レンチウイルスベクターを用いて、PARP1およびPARP2の発現を抑制したES細胞を作製した。また、ポリ(ADP-リボシル)化の分解に関わるポリ(ADP-リボース)グリコヒドラーぜ(PARG)の発現を抑制したES細胞も作製し、今後、これらを用いて多能性幹細胞における働きについて解析する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
マウスES細胞を用いた解析は概ね予定通り実施できたが、iPS細胞とmGS細胞については途中段階である。
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今後の研究の推進方策 |
マウスES細胞については、初年度に作製したshRNA発現レンチウイルスベクターによってPARP1、PARP2およびPARGを発現制御した細胞を用いて解析し、PARP阻害剤のマウスES細胞に対する影響の実態を明らかにする。また、PARP阻害剤や遺伝子発現制御が、ES細胞のゲノムインプリンティングなどのエピジェネティク修飾や細胞周期など、他の影響についても解析する。 さらに、マウスES細胞で初年度実施した、PARP阻害剤の細胞増殖、p53の活性化やアポトーシス誘導への影響など、これら一連の解析をマウスiPS細胞およびmGS細胞でも実施する。また、PARP1、PARP2およびPARGを発現制御した細胞も作製し、その影響について解析する。これらの結果をもとに、多能性幹細胞におけるポリ(ADP-リボシル)化の働きの共通性と、由来の異なる多能性幹細胞によって働きに違いがあるかどうかを調べる。 これらの解析を総合的に評価し、多能性幹細胞におけるポリ(ADP-リボース)代謝の役割についてその知見をまとめ、学会発表し、論文発表の準備を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
2年目開始時から所属機関が変わり、移動後すぐに研究環境の整備が必要になるため、次年度使用額が生じた。この次年度使用額を合わせて、細胞培養装置、冷凍庫、遺伝子解析装置などの研究備品、細胞培養、一般研究用試薬、培養用のプラスチック器具などの消耗物品費に使用する。また、成果発表のための旅費などに使用する予定である。
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