本研究は、Capn8-Tgマウス(Capn8-Tg)が乾癬発症する表現型の発見を契機に、乾癬発症におけるカルパインの役割を解明し、新規治療法開発に繋がる分子基盤の確立を目指すものである。乾癬は表皮細胞の増殖・分化異常、リンパ球の浸潤などを所見とする疾患である。遺伝子や環境因子の複合要因のもと、表皮細胞と免疫細胞との相互作用が病態の中心と考えられているが、発症機序は未だ不明な点が多い。2023年度は下記を行った。 (1)皮膚マイクロアレイ解析及びプライマリー表皮細胞を用いた解析から、Capn8-Tgマウスの病態が、発現するCAPN8の作用で表皮細胞の細胞分化が亢進することが引き金であることを示唆する結果が得られた。 (2)Capn8KOマウス皮膚に対して免疫賦活化剤イミキモドによる乾癬誘導を行っても症状の抑制が見られなかった。次に、イミキモド乾癬誘導モデルマウスを用いて全カルパイン分子種の発現変動を調べた。その結果、CAPN8ではなくCAPN12とCAPN15の有意な発現亢進が見られた。Capn12KOマウスに対してイミキモド乾癬誘導を行うと症状が抑制されたことから、病態形成へのCAPN12の関与が明らかになった。 (3)皮膚においてCAPN12は表皮細胞に発現することを見出した。 これらの結果は、表皮細胞におけるCAPN12の活性異常が乾癬発症に関わることを示しており、CAPN12の活性阻害は乾癬の新たな治療戦略として期待される。
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