研究課題
本課題は「免疫原性細胞死(Immunogenic Cell Death, ICD)」の理解を深め、in situ vaccine戦略の有効性を検証するものである。すなわち、がん細胞を生体内で殺傷することにより、免疫システムにがん抗原として認識させ、抗がん免疫応答を誘導する治療戦略である。申請者の独自研究である、がんワクチン株の生体内挙動との共通点に着目し、細胞死メカニズムの分類にとらわれることなく、腫瘍組織環境下におけるがん死細胞への初期免疫応答を含め、免疫原性に関わる因子を探る。研究計画は「1.ワクチン株解析から注目したImmunogenic Factorsの機能解析」「2.抗がん剤ライブラリーによるImmunogenic Factorsの探索と変動検証」「3.生体内がんワクチン戦略とがん患者免疫状態の診断技術開発」の3つを主題として計画し、初年度から引き続き、1.および2.の検討を重点的に行っている。これまでにCRISPR-CAS9システムにより作製したKO細胞の検討から Immunogenic Factorsの最重要候補として1遺伝子を絞り込んだが、同時に、この遺伝子は本体の機能(A)以外にも、イントロン部分に特殊な機能を有するRNAがコードされていること(B)が明らかとなっていた。今年度はKO株に(A)および(B)の機能を再付与したレスキュー株を作製したところ、機能(B)の再付与により、WT株と同様の挙動を示すことを明らかにしている。また、3.については臨床検体の提供が必要となるため、臨床医の協力を頂きサンプルの蓄積を開始している。
2: おおむね順調に進展している
今年度は初年度計画を発展させる期間に位置付けており、特に「1.ワクチン株解析から提唱する新規Immunogenic factorsの機能検証、独自の定義付け」について進展があった。マイクロアレイ解析とCRISPR-Cas9システムにより作製したKO細胞株の解析から、免疫原性因子として、1遺伝子を絞り込んでいたが、この遺伝子には本体のタンパク以外にも別のRNAをコードしていることがわかり、タンパク本体の機能(A)と特殊RNAの機能(B)のいずれが免疫原性に関与するのかを検討した。具体的には、ワクチン株・KO株に(A)(B)の機能を遺伝子導入により再付与したレスキュー株を作製し、マウスに移植した後の挙動を検討した。この結果、機能(B)の付与により、ワクチン株は免疫原性・ワクチン株様の性質を失い、WT株と同じ性質を表現した。「2.抗がん剤ライブラリーによるImmunogenic Factorsの探索と変動検証」については、評価系の構築に難航していたため、一時的に中断し、「3.生体内がんワクチン戦略とがん患者免疫状態の診断技術開発」において必要な臨床検体の収集を開始した。項目ごとの進捗にプラス・マイナスがあるが、総合すると、おおむね順調に進展していると言える。
「1.ワクチン株解析から注目したImmunogenic Factorsの機能解析」の検討が順調に進んでおり、目的のImmunogenic factor候補因子を絞り込めている。この候補因子の生体内での挙動、特に臨床サンプルを評価する「3.生体内がんワクチン戦略とがん患者免疫状態の診断技術開発」の検討に反映させて、最終年度に成果をまとめたいと考えている。
当初に想定した実験系では十分な評価ができなかったため、代替・改良案を検討してきた。輸送事情も重なり、本年度中に完了することができなかった項目については、翌年度の計画に組み込みなおして完了させる計画である。
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Vaccine
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