本研究は、樹状細胞(DC)の活性化に伴ってDC上に発現誘導される抑制性受容体CD72分子が、慢性感染症における病態の持続に重要なDC疲弊にどのような機能を果たすかを明らかにすることを目的とした。まず、様々な免疫細胞におけるCD72の発現を詳細に明らかにするため、マウス脾臓細胞をフローサイトメトリー解析すると、CD72はB細胞に強く発現しており、DCやNK細胞にも発現が認められた。DC上のCD72の発現は、イミキモドやLPS刺激によりDCを活性化することで、B細胞と同程度に増強した。マウス骨髄細胞から誘導したDCにおけるCD72の発現も、DCの活性化によりで増強した。さらに、野生型マウスおよびCD72欠損マウスに、LCMウイルス(LCMV)clone 13株を腹腔内投与により感染させて持続感染のモデルマウスを作製し、感染後1カ月間の体重、血中ウイルス力価を継続的に測定すると、野生型マウスでは感染後期でもウイルスが排除されずに感染症が持続し、体重が減少していたが、CD72欠損マウスではウイルスが排除されて感染の持続化が起こらず、体重減少も見られなかった。以上より、活性化に伴ってDC上に発現誘導されたCD72が、DC疲弊を引き起こし、感染の持続に寄与する重要な分子であることが示唆された。
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