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2020 年度 実施状況報告書

新規がん遺伝子候補分子TRB1の新たな発がんメカニズムに基づく抗がん剤の開発基盤

研究課題

研究課題/領域番号 20K07052
研究機関名古屋市立大学

研究代表者

林 秀敏  名古屋市立大学, 医薬学総合研究院(薬学), 教授 (80198853)

研究期間 (年度) 2020-04-01 – 2023-03-31
キーワードTRB1 / がん幹細胞 / CD44 / xCT / フェロトーシス / ROS / シスチン / c-Myc
研究実績の概要

申請者らは複数のがん細胞株からゲノム編集により、 TRB1のノックアウトクローンを樹立し、3次元培養によるスフェロイド形成がほとんど見られなくなることを見出している。また、乳がんの幹細胞マーカーである CD44の発現もTRB1のノックアウト細胞では激減していることを明らかにしている。そこで、各種TRB1のノックアウトクローンを用いて、幹細胞マーカーの低下の機序を明らかにするとともに、がん幹細胞維持機能の可能性とそのメカニズムの解明を進めた。
まず、CD44の中でもがん幹細胞に多いアイソフォームとして知られているCD44v8-v10の発現がTRB1のKOで低下していることが、mRNA レベル、タンパクレベルで明らかとなった。このTRB1によるCD44アイソフォームの発現制御は少なくとも転写レベルでおこっていることがプロモーター解析により明らかとなった。また、TRB1-KO細胞にTRB1を過剰発現させたレスキュー実験を行った結果、CD44 mRNAの発現レベルは大幅に回復することがわかった。
先のCD44v8-v10はシスチン-グルタミン酸アンチポーターの構成分子xCTを細胞膜に安定化させることが報告されており、TRB1-KO細胞でも、xCTが不安定化されることが観察された。また、シスチンの細胞内濃度の低下は活性酸素種(ROS)の増加を誘導することが知られているが、TRB1の欠損により、細胞内ROSの上昇が見られた。さらに、最近、ROSによる鉄依存性の非アポトーシス性細胞死として注目されている「フェロトーシス」の誘導剤である Erastin の感受性もTRB1 KOによって増強することが明らかとなった。
以上のことから、TRB1はCD44v8-v10の発現上昇を介し、xCTを安定化させ、細胞内ROSを効率的に除去し、フェロトーシスに対して抵抗性を獲得していることが示唆された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

新型コロナウイルス感染症の拡大により、実験やディスカッションなどの実施、進行に影響がでたが、TRB1のがん幹細胞維持機能の解析については、順調に進めることができた。また、実績概要では記載していないが、ゲノム上でTRB1と近接しているc-Mycとのクロストークの実験も順調に進み、c-Mycの作用を増強することを多く見出している。

今後の研究の推進方策

今回、TRB1のがん幹細胞維持機能が乳がんで強く示唆されたことから、他のがん種においても同様の機能があるか解析を進め、広範ながん幹細胞でのTRB1の作用であるのか確認し、正常細胞の増殖等に対しては特にTRB1の効果は見い出せていないことから、がん幹細胞の新たな治療標的としての可能性を探りたい。
また、ゲノム上で近接しており、多重遺伝子増幅が一部のがんで見られ、今回、一部明らかにしたc-MycとTRB1とのクロストークについて、さらにその分子レベルでのメカニズムを明らかにしていきたい。

  • 研究成果

    (10件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件、 オープンアクセス 3件) 学会発表 (7件)

  • [雑誌論文] Periplocin and cardiac glycosides suppress the unfolded protein response2021

    • 著者名/発表者名
      Tokugawa Muneshige、Inoue Yasumichi、Ishiuchi Kan’ichiro、Kujirai Chisane、Matsuno Michiyo、Ri Masaki、Itoh Yuka、Miyajima Chiharu、Morishita Daisuke、Ohoka Nobumichi、Iida Shinsuke、Mizukami Hajime、Makino Toshiaki、Hayashi Hidetoshi
    • 雑誌名

      Scientific Reports

      巻: 11 ページ: 9528

    • DOI

      10.1038/s41598-021-89074-x

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Transcriptional coactivator TAZ negatively regulates tumor suppressor p53 activity and cellular senescence2020

    • 著者名/発表者名
      Chiharu Miyajima, Yuki Kawarada, Yasumichi Inoue, Chiaki Suzuki, Kana Mitamura, Daisuke Morishita, Nobumichi Ohoka, Takeshi Imamura, Hidetoshi Hayashi
    • 雑誌名

      Cells

      巻: 9 (1) ページ: 171

    • DOI

      10.3390/cells9010171

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Anti-Inflammatory Activity of Kurarinone Involves Induction of HO-1 via the KEAP1/Nrf2 Pathway2020

    • 著者名/発表者名
      Sakiko Nishikawa, Yasumichi Inoue, Yuka Hori, Chiharu Miyajima, Daisuke Morishita, Nobumichi Ohoka, Shigeaki Hida, Toshiaki Makino, Hidetoshi Hayashi
    • 雑誌名

      Antioxidants (Basel)

      巻: 9 (9) ページ: 842

    • DOI

      10.3390/antiox9090842

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 苦参由来成分kurarinoneは統合的ストレス応答PERK-ATF4経路を活性化しがん細胞の増殖を抑制する2021

    • 著者名/発表者名
      德川宗成,西川佐紀子,伊藤友香,井上靖道,中島健一,堀 優華,宮嶋ちはる,井上 誠,水上 元,牧野利明,林 秀敏
    • 学会等名
      日本薬学会第141年会
  • [学会発表] 脂質代謝関連転写因子SREBP1の脱ユビキチン化によるがん悪性化制御2021

    • 著者名/発表者名
      井上靖道,住田丈典,柏原翔陽,宮嶋ちはる,林 秀敏
    • 学会等名
      日本薬学会第141年会
  • [学会発表] TFEDMAを用いたデオキシフッ素化によるMBHフロリドの合成2021

    • 著者名/発表者名
      長坂天斗,松野文香,住井祐司,香川 巧,林 秀敏,柴田哲男
    • 学会等名
      日本薬学会第141年会
  • [学会発表] 天然生理活性成分による小胞体ストレス応答の制御機序解明2020

    • 著者名/発表者名
      德川宗成,伊藤友香,石内勘一郎,牧野利明,松野倫代,水上 元,井上靖道,林 秀敏
    • 学会等名
      第84回日本生化学会中部支部例会
  • [学会発表] 脱ユヒビキチン化酵素 USP17 による脂質代謝関連転写因子 SREBP タンパク制御機構の解析2020

    • 著者名/発表者名
      柏原翔陽,住田丈典,宮嶋ちはる,井上靖道,林秀敏
    • 学会等名
      第19回次世代を担う若手のためのファーマ・バイオフォーラム2020
  • [学会発表] 脱ユビキチン化酵素USP28はEMT関連転写因子Snailを安定化してがん細胞の浸潤を促進する2020

    • 著者名/発表者名
      中本遥菜,佐藤晃一,田中仁美,吉田真南香,宮嶋ちはる,井上靖道,林 秀敏
    • 学会等名
      フォーラム2020:衛生薬学・環境トキシコロジー
  • [学会発表] 脱ユビキチン化酵素USP28はEMT関連転写因子Snailを安定化してがん細胞の浸潤を促進する2020

    • 著者名/発表者名
      中本遥菜,佐藤晃一,田中仁美,吉田真南香,宮嶋ちはる,井上靖道,林 秀敏
    • 学会等名
      日本病院薬剤師会東海ブロック・日本薬学会東海支部合同学術大会2020

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公開日: 2021-12-27  

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