研究課題
ヒト染色体上ではTRB1遺伝子及びがん原遺伝子c-Mycが近傍に位置し、機能的にも類似性が高い。さらに、AMLや前立腺がんなどでこの領域の遺伝子増幅が報告され、c-Mycだけではなく、TRB1も共増幅する症例も知られており、協調して腫瘍の形成や悪性化と関わっていることが示唆されている。そこで、TRB1の新たな発がんメカニズムを検証するため、c-Mycとのクロストークについてさらに詳細に解析を進めた。はじめに、公共データベースを用いて、TRB1 promoter上のc-Myc結合推定領域を検索したところ、複数の領域が検出され、ChIPアッセイでも同様に、promoter上の転写開始点(TSS)より1kbほど上流と、TSS近傍へのc-Mycの結合が確認された。また、TRB1 promoterを含むレポータープラスミドを作製し、細胞に発現させたところ、c-Mycの共発現によりプロモーター活性の増強し、DNA結合のないc-Mycではその効果が消失したことからも、c-Mycのpromoterへの結合が必要であることが明らかとなった。そこで、TSS近傍の推定結合領域に注目し、各種長さのpromoter領域を組み込んだレポータープラスミドを調製し、解析したところ、c-Mycによる応答に必要な配列が特定された。一方、TRB1はc-Mycによる転写活性化能を促進するとともに、c-Myc自身の発現をも正に制御していることが明らかとなり、遺伝子増幅により、発現の共増強だけでなく、機能的にも強調し、ポジティブにフィードバックすることでがんの発生や進行を強く促進していることが示唆された。現在のところ、c-Mycはundruggableなタンパクと位置付けられていることから、TRB1の活性や発現の低下させる化合物の開発により、c-Mycの発現が高い腫瘍に対する新たな治療戦略となると考えられる。
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