研究課題/領域番号 |
20K07053
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研究機関 | 東北医科薬科大学 |
研究代表者 |
進藤 佐和子 東北医科薬科大学, 薬学部, 助教 (50795987)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 核内受容体 / ERα / リン酸化 |
研究実績の概要 |
本申請者は、核内受容体であるエストロゲン受容体(ERα)のセリン216がマウスの免疫細胞(好中球や脳ミクログリア)でリン酸化されることを見出し、非リン酸化ERαモデルマウス(Esr1S216Aマウス)では肥満傾向や免疫細胞の活性化が認められることを明らかにした。エストロゲンは、ERαを介して脂質代謝制御、インスリン作用、神経保護など多様な生理作用を示すことから、これまで肥満や糖尿病およびパーキンソン病を含む神経変性疾患にエストロゲン-ERα系が防御的に働くと考えられてきた。そこで、ERα機能のリン酸化による制御と肥満や神経変性発症との関連性を分子レベルで明らかにすることを目指した。昨年度は、分子メカニズム実験のモデル細胞としてマウス由来ミクログリア細胞株(BV2細胞)を用い、リン酸化ERαの発現を検討したが、ERαの発現は非常に低く、外来性ERαとそのリン酸化変異体を過剰発現させた細胞において異なる遺伝子発現の制御は確認できなかった。一方、野生型とEsr1S216Aマウスから得られたミクログリア・アストロサイト混合細胞中のミクログリアにおいて異なる遺伝子発現が制御されることから、BV2細胞のようにミクログリア単独ではリン酸化ERαの十分な機能は見られない可能性が考えられた。これらのことから、ミクログリアに発現するリン酸化ERαは、脳細胞同士のネットワークを介して重要な役割を持つことが推測された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
当研究室では、ミクログリアの他に神経細胞、アストロサイト、オリゴデンドロサイトなどの脳内細胞間相互作用を正確に評価できる大脳スライス培養系を構築している。この大脳皮質スライス培養系は、生後7日のマウスから脳を摘出後、大脳皮質を分離し、350μm幅に切断した後、培地で浸したメンブレン上で培養を行う手法である。本手法では、脳内と同じ細胞構成でありながら、様々な分子生物学的手法を利用可能であり、同一個体から複数枚のスライスを調製できることから、マウス個体による差をなくした状態でも評価することが可能な系である。この系を習得し、野生型マウス(Esr1WTマウス)とEsr1S216Aマウス(Esr1S216Aマウス)の脳スライス培養系を用いてリポ多糖(LPS)による炎症性サイトカイン発現レベルの比較検討を行った。以前から使用していたマウス由来ミクログリア細胞株のBV2細胞を用いてリン酸化/非リン酸化ERαの過剰発現下ではLPSによる炎症応答性の違いは認められなかったが、大脳スライス系では非リン酸化ERαマウスにおいて炎症が亢進することが確認でき、ミクログリアと他の脳細胞の相互関係が重要であることが確認できた。また、これによりin vivoにより近い系を得たことが確認できた。
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今後の研究の推進方策 |
昨年度までのBV2細胞を用いた単独ミクログリア培養では、リン酸化ERαの十分な機能は見られないことが明らかになったため、脳細胞同士のネットワークが重要であると考えられた。今回、in vivoとin vitroの間のex vivo系として知られているマウス脳スライス培養系におけるミクログリアによるLPSによる炎症応答性を検討し、in vivoでの結果とほぼ同等であることが確認できた。今後、脳スライス培養に直接炎症誘発剤や抗炎症薬を添加することで、脳細胞への影響を炎症性サイトカインの放出などを指標にして検討を行う。また、スライス培養系で得られた脳ネットワークによるサイトカインの放出が、外来性リン酸化および非リン酸化ERαを過剰発現させたBV2細胞に影響を与えるかについても検討を行う予定である。また、精神疾患および神経変性疾患の特定のための行動薬理実験を行い、マウス脳のミクログリアやドーパミン作動性神経細胞数などの変化について病理的な解析を行う。
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次年度使用額が生じた理由 |
当初を予定していたEsr1S216A マウスの血中のホルモン量のモニタリングや肥満関連マーカー測定用抗体アレイによって肥満マーカーの変化の解析の実験が進まなかったため。また新型コロナの影響で学会参加費、旅費が不要であったため。 今年度は、予定していた測定キット購入費として使用する。
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