研究課題/領域番号 |
20K07055
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研究機関 | 中部大学 |
研究代表者 |
川本 善之 中部大学, 生命健康科学部, 准教授 (10410664)
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研究分担者 |
上野 有紀 愛知学院大学, 健康科学部, 准教授 (20388060)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2025-03-31
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キーワード | メラニン / 炎症性腸疾患 / イカスミ / IBD |
研究実績の概要 |
炎症性腸疾患(IBD)は最近の研究から、免疫細胞のマスト細胞と炎症性マクロファージが深く関与していることが示されている。我々は独自に合成した水溶解性メラニンが、マスト細胞とマクロファージの活性化をいずれも強く抑制することを見出している。本研究では、マスト細胞やマクロファージを効果的に抑制する、分子量サイズを一定範囲に限定して調整したものを「活性メラニン」と定義し、メラニンを多量に含むイカスミを含め、IBDモデルに対してその効果を検証・実証するとともに、制御メカニズムを解明することを目的として、研究を進めている。 これまで、デキストラン硫酸ナトリウム(DSS)による潰瘍性大腸炎(UC)モデルを用い、物理的破砕法によって微細化処理したイカスミを調整し、腸炎抑制効果の有無を検討した。微細化処理したイカスミ投与により、大腸の収縮抑制効果が認められた。HE染色および抗F4/80抗体を用いた蛍光免疫染色による病理組織解析の結果、イカスミ投与によって、リンパ球、およびマクロファージといった炎症性細胞の集積抑制がみられた。一方、腸組織における炎症性サイトカイン遺伝子の発現を調べた結果、IL-6、IL-1β、TNF-αの発現抑制は認められなかったが、iNOSの遺伝子発現抑制が確認された。リンパ球の浸潤抑制が特徴的であったことから、微粒子加工イカスミはDSSによる粘膜固有層の傷害を抑制するというよりも、その後に引き起こされる腸内細菌の侵入に続く、炎症性リンパ球や炎症性マクロファージの局在を抑制することで、それらの細胞が関わる炎症反応の増悪を抑制しているのではないかと考えられた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
イカスミ由来の活性メラニンの調整に時間を有したことと、1度目の動物実験において陽性対照群で有意な差が得られず、再度やり直したことにより、予定よりもスケジュールが後方にずれ込んだ。
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今後の研究の推進方策 |
イカスミはメラノプロテインと呼ばれるメラニン含有タンパク質の凝集体である。これを物理的および酵素的に処理して、さらに微粒子化したイカスミ(イカスミ由来活性メラニンの一形態)の作出を試み、潰瘍性大腸炎モデルに適用する。具体的には、マスコロイダーやボールミルを用いて微粒子化したイカスミに対して、各種食品加工用プロテアーゼまたはペプチダーゼを処理し、メラノプロテインの凝集塊の極微粒子化を試みる。こうして調整した検体は、粒子径測定装置で計測して粒度分布を確認後、培養マクロファージ細胞株へ処理し、LPSにより応答して発現する炎症性サイトカイン遺伝子発現への影響を調べるとともに、動物モデルにより効果を検証する。
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次年度使用額が生じた理由 |
イカスミ由来の活性メラニンの調整に時間を有したことと、1度目の動物実験において技術上の問題により陽性対照群で有意な差が得られず、再度やり直したことで、予定よりもスケジュールが後方にずれ込んだ。 予算は動物実験に必要な消耗品の他、細胞培養、遺伝子発現解析試薬、病理組織解析関連試薬、ガラス・プラスチック製一般消耗品の購入に使用する。
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