現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
無処置群と比較してDSS処置群(IBD群)で統計的な有意差が観測された項目を示す。 体重減少(9, 72週令)、DAIスコア増加(9, 72週令)、大腸長の短縮(9, 72週令)、大腸上皮組織の炎症(9, 72週令、無処置群の72週令でも炎症が相当度みられる)、IBD群の大腸IAP活性(9, 40週令で軽微な上昇、72週令で顕著な上昇)、無処置群の大腸IAP活性(9-40週令で同レベルだが72週令で低下)、IBD群の血漿中ALP活性の低下(9, 40週令で顕著、72週令で軽微)、IBD群の血漿中亜鉛濃度の低下(9, 40週令で明確、72週令で顕著)、無処置群の血漿中ALP活性の低下(9週令から40-72週令で低下)、無処置群の血漿中亜鉛濃度の低下(9週令から40-72週令で低下)、大腸中の亜鉛濃度(無処置群とIBD群で変化なし)。
結果を要約すると、DSS処置により惹起される潰瘍性大腸炎は9および72週令で顕著に発症した。これと連動する様に、血中の亜鉛濃度及びIAP活性は加齢とIBD発症に伴い低下し、無処置群の大腸IAP活性も加齢により低下した。しかしながら、IBD群の大腸IAP活性も加齢により更に低下すると予想されたが、結果は全くの逆であり、IBD発症時において大腸IAP活性は加齢により(すなわち炎症の増強に伴い)上昇した。 今年度は、この予想と反した実験結果の解析と追加検討を行ったため、予定していた研究計画にやや遅れを生じることとなった。 追加検討の結果を要約すると、IBD発症時においてのみ加齢により上昇する大腸IAP活性は、大腸組織由来ではなく、炎症を惹起した上皮細胞の内部に浸潤した白血球細胞由来である可能性を新たに見出した。加えて、IBD発症時の便中においては顕著なIAP活性が観測されることを見出し、IBD治療のバイオマーカーとしての可能性も検討する予定である。
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