研究課題/領域番号 |
20K07057
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研究機関 | 大阪医科大学 |
研究代表者 |
栗生 俊彦 大阪医科大学, 研究支援センター, 特別職務担当教員(講師) (10401374)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | 電気生理 / シナプス / 統合失調症 / iPS細胞 / 神経細胞 |
研究実績の概要 |
2020年度当初の計画に従って、「①神経細胞の成熟を促進するための培養技術の開発」と、「②統合失調症患者において、異常が見つかった蛋白質を蛍光標識することにより生きた疾患神経細胞上で追跡する分子イメージング法を疾患iPS分化神経細胞に適用する」について、それぞれ研究を進めた。 ①の培養技術の開発に関して、具体的には、分化させたiPS分化神経細胞にアストロサイトを加えるとシナプスマーカーの発現が早まることが、新たにわかってきたので、まずはアストロサイトを共培養した神経細胞から測定することを試みた。電気生理学的手法を用いて、共培養した神経細胞からシナプス後電流の測定を行ったところ、培養25日目で約7割の神経細胞から単一興奮性シナプス後電流(mEPSC)の測定に成功した。アストロサイトを加えない培養では、約1~2割程度の細胞からしかシナプス後電流の測定はできなかったため、各段に向上したと言える。加えて、軸索を刺激することによって引き起こされるシナプス後電流(evoked EPSC)も測定することに成功した。現在、統合失調症疾患iPS分化神経細胞のmEPSCの測定を進めているが、今後、evoked EPSCの測定も合わせて進める予定である。 ②の統合失調症関連分子の分子イメージングについては、iPS分化神経細胞への適用の前段階として、マウス海馬神経細胞上でneurexin分子の動態解析を行っている。軸索内でneurexin分子は両方向性の動態を示し、特定のシナプスに集積することにより、個々のシナプスの成熟を調節していることを示す結果が得られつつある。今後、疾患iPS分化神経細胞上で同様にneurexinの分子動態を測定することを計画している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2020年度の計画として、①iPS分化神経細胞の成熟を促進するための培養技術の開発を行い、アストロサイトを共培養した神経細胞から、比較的培養初期(25-30日)にシナプス後電流を記録することができた。さらに統合失調症患者より得られたiPS細胞から分化させた神経細胞から電気生理学的手法を用いてシナプス電流を測定し、健常者との比較を進めている。一方で、②統合失調症患者において、異常が見つかった蛋白質を蛍光標識することにより生きた疾患神経細胞上で追跡する「分子イメージング法」を疾患iPS分化神経細胞に適用することについては、コロナ禍の影響で思うように実験ができない期間があったため、現在のところマウス海馬培養神経細胞を用いた実験に留まっている。今後iPS分化神経細胞への適用を試みる予定である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度の進展として、iPS分化神経細胞培養技術の開発、iPS分化神経細胞からの単一興奮性シナプス電流及び軸索の刺激によって引き起こされる興奮性シナプス後電流(evoked EPSC)の測定に成功した。これらの進展に基づいて、次のステップとして、統合失調症患者から得られた疾患iPS分化神経細胞におけるmEPSC及びevoked EPSCの測定を現在進めている。これまでに、統合失調症多発家系患者から得られたiPS分化神経細胞については、データ取得はすでに終了し、現在共同研究者により論文を執筆中である。また、3q29 microdeletion syndromeの患者から得られたiPS分化神経細胞のシナプス後電流の測定については、測定を継続中である。 統合失調症関連分子の分子イメージングに関しては、今後疾患iPS分化神経細胞への適用を試みる。まずは、蛍光蛋白質と関連分子を繋いだコンストラクトを作成する予定である。関連分子の候補として、統合失調症への関連が示唆されているneurexinを検討している。現在、マウス海馬神経細胞を用いて分子イメージングを行っており、neurexinがシナプスの成熟に関与している可能性が示唆されている。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の影響により、実験ができない期間があったため、培養の回数が減り予定していたよりも消耗品の購入による支出が少なかった。また、初年度購入予定であった電動式マニピュレータについて、共同研究機関から借り受けることができたため、その購入費についても支出の必要がなかった。翌年度分として請求した助成金と合わせた使用計画として、倒立型顕微鏡の購入を計画している。電気生理学的測定に使用している顕微鏡の老朽化が著しく、新しい顕微鏡の購入が必須である。
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