研究課題/領域番号 |
20K07069
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研究機関 | 横浜市立大学 |
研究代表者 |
増川 太輝 横浜市立大学, 医学部, 助教 (10711898)
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研究分担者 |
實木 亨 三重大学, 医学系研究科, 准教授 (10546675)
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研究期間 (年度) |
2020-04-01 – 2023-03-31
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キーワード | L-DOPA / 中枢性血圧制御 / GPR143 / 黒質-線条体 |
研究実績の概要 |
昨年までに、ドーパが、延髄弧束核領域(NTS)における vGlut2 陽性細胞に作用し、降圧・徐脈応答を起こすことを示唆する結果を得ている。また、ドーパによる心血管応答が GPR143 以外の受容体を介していることを GPR143 KO ラットを用いた検討により明らかにした。本年度は、ドーパによる心血管応答を抑制する化合物の探索と、GPR143 を介するドーパ神経伝達の生理学的意義の解明を行った。 NTS におけるドーパの薬理学的性質を明らかにするため、ドーパを投与した際の降圧・徐脈応答に対する各種化合物による拮抗作用を検討した。その結果、プロプラノロールおよびヨヒンビンがドーパ応答を抑制することを見出した。さらに、検討する化合物を増やし、ドーパの薬理学的プロファイルを決定する必要がある。 ドーパが、NTS において、GPR143 非依存的な生体応答を示すことが明らかになったが、一方において、GPR143 を媒介する薬理・生理作用は何か、どのような神経回路において作用するのかを明確にする必要がある。ドーパミン D2 受容体作動薬のキンピロールを GPR143 KO マウスに投与すると、WT マウスと比較し、その運動量および生化学的変化に対する効果が減弱する。このような表現型がどのような神経回路の GPR143 によるものなのかを遺伝学的に検討したところ、線条体間接路特異的 GPR143 KO マウスにおいて同様の表現型が認められた。これらのことは、GPR143 が黒質-線条体ドーパミン神経系を修飾することを示唆する。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)ドーパによる心血管応答を抑制する化合物を複数見出した。これらの化合物の特徴を捉えることは、新規受容体同定のための手がかりになりうる。 (2)GPR143 を媒介するドーパ神経回路が明らかとなり、その生理学的意義が明らかにされつつある。 したがって、概ね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
内在性のドーパが降圧・徐脈応答を起こすかどうかについて、大動脈神経の TH 陽性細胞に光遺伝学的手法を適用することにより明らかにする。 NTS におけるドーパ応答の薬理学的プロファイルをさらに検討し、新規受容体同定を目指す。 黒質-線条体ドーパミン神経系における ドーパ-GPR143 の役割を明らかにする。
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次年度使用額が生じた理由 |
コロナ禍の研究活動だったため、活動時間短縮を余儀なくされた。 次年度は、消耗品の購入の増加が見込まれ、さらには、論文投稿を控えているため、助成金はそれらのために用いる。
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